1.新中国成立と旧ソ連制度の導入期

 中国では国家官僚を任用する伝統的なエリート選抜試験として隋王朝の時代に科挙制度が始まり、各時代に制度改定が行われながら清朝末期まで続いた。近代高等教育制度への移行を模索する中で1905年に科挙制度が廃止された後、西洋方式が取り入れられるようになり、主としてアメリカの教育制度が参考とされた。

 その後、1949年に中華人民共和国が成立すると、教育制度のモデルは旧ソ連方式に全面的に改められ、高度集権的な計画経済に対応する高等教育の制度体系が導入された。中国政府は1951年に、外国人が中国に開設していた学校を接収し、翌1952年に「大学と学部・学科の調整」を実行して全国の私立大学の国有化を行った。これにより、政府が全面的に計画し、公的財政を支出し、管理・運営を行う大学の国有体制が確立した。

 新中国の成立後、中国政府は社会主義国家の建設のため、重化学工業と国防事業を優先的に発展させる政策をとった。その当時の中国は、小学校の入学率が20%足らずで、中学校の入学率は6%という状況であった。人口の80%以上が文盲であり、農村部に至っては文盲率が95%以上に達していた。1949年の大学卒業生は2万1000人であり、各種産業の発展に必要とされる専門的な知識と技術を持った人材が非常に不足していた。

 中華人民共和国の初代国務院総理に就任した周恩来は、新中国の建設のために人材不足が最大の問題であるとの認識を表明し、経済および国防体制の速やかな確立のために人材育成を急ぐことを指示した。これを受け教育部は1952年、「全国大学統一入試テスト」の導入を決定し、同年に6万6000人が大学に入学した。

 新中国成立の初期は工業基盤が脆弱であったため、ソ連の援助を受けて建設する重点プロジェクトを中心に工業化を発展させる戦略計画が定められた。この重点建設の考え方は高等教育の分野にも徹底され、教育部は1954年10月、「重点大学および専門家の業務範囲に関する決議」を公表し、中国人民大学北京大学清華大学ハルピン工業大学、北京農業大学、北京医学院の6校の大学を重点大学に指定した。中国政府の高等教育の発展に関する基本方針は、着実な発展と教育の質の重視であり、学校や学生数の量的な拡大を急ぐよりも、これらの重点大学に集中的に資源を投入し、国の政策方針を徹底させて、ソ連の先進的な制度から学び、その成果を全国の大学へ波及させることであった。

 社会主義計画経済による「大躍進」政策のもとで中国社会は発展し、各分野で専門知識人材に対するニーズは旺盛で、1957年までに200校余りだった大学は、1958年だけで約800校が新たに開校した。このため一部の大学では、教師や学校設備の不足のために教育の質が確保されない状況が生じた。こうした中、中央政府は1959年5月、「高等教育機関の中に一群の重点校を指定することに関する決定」を公表し、基礎的条件の整った少数の大学の教育の質を重点的に高めることが重要であるとの考え方を改めて示すとともに重点大学の再指定を行った。この時に指定された重点大学は、北京大学中国人民大学復旦大学中国科学技術大学、上海第一医学院、ハルピン工業大学清華大学天津大学上海交通大学西安交通大学華東師範大学、北京工業学院、北京航空学院、北京農業大学、北京医学院、北京師範大学の16校である。これらの大学は同決定に基づき、中央政府の同意を得なければ在校生の規模を拡大したり、学部・学科の新設を行ってはならないものとされ、中央政府による徹底した運営管理が行われた。

 その後、1959年8月、1960年、1963年にそれぞれ「全国重点大学の追加に関する決定」が公表され、1963年までに全国の重点大学は68校になった。このうち総合大学が14校、工業大学33校、医薬科大学5校、農林大学4校、政治・法科・経済大学3校、師範大学2校、外国語大学2校、芸術大学1校、体育大学1校、軍事大学が3校であった。

 中央政府は1961年、「教育部直属大学の業務に関する60条」を公表し、全国の教育部直属の重点大学に対する集中管理を強化する方針を打ち出した。この中で、高等教育の社会的役割は、共産党の教育方針に基づいて社会主義建設のために必要な各分野の専門人材の養成に貢献することであることが改めて強調された。

1966年から始まった「文化大革命」により、高等教育は政治運動の一環に巻き込まれ、一部の重点大学は指定の取り消しや運営停止または農村部への移転等が行われた。「大学統一入試テスト」は約10年間にわたって中断され、教育研究活動は停滞し、中国高等教育の発展過程は大きな影響を受けた。


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