3.春暉計画

(1)概要

 「春暉(しゅんき)計画」は、1996年に始まった海外人材呼び戻し政策のひとつで、中国から出国した海外留学生または留学経験者の短期帰国を奨励するための経費支援等を政府が行うものである。海 外に長期に在住する優秀な留学人材の活用を図り、母国である中国の社会主義建設と社会経済発展のために、短期帰国を含む幅広い方式で貢献することを奨励する目的で教育部が主管部門となって計画が実施された。& lt; /p>

(2)背景および実施経緯

 改革開放以来、中国の高等教育機関は量、質の両面において急速な発展を遂げたが、1990年代前半までの大学進学率は1990年と1995年の時点でそれぞれ3.4%と7.2%に留まっていた。大 学の学部での教育と大学院レベルの研究活動の水準も海外の主要な高等教育機関とは開きがあり、中国の優秀な人材は修士号や博士号の学位取得を目的として海外の大学院への留学を選択する傾向が比較的強かった。& lt; /p>

 「春暉計画」は主に海外で博士学位を取得して専門領域で顕著な学術成果を挙げた留学経験者を短期帰国させ、中 国の社会経済の建設のための重大プロジェクトや高水準の科学技術研究に参画することを奨励することにより、国内の科学教育事業の発展を促進することを狙いとした施策である。

(3)実施状況および成果

①「春暉計画」の助成内容

 「春暉計画」の助成対象となる学科領域は、中国高等教育機関の学科体系の発展方向や学術会議、各種プロジェクトの実施計画状況などの国内ニーズを勘案したうえで、教育部が毎年決定し発表する。基 本となる領域はエネルギー、電子情報技術、先進製造技術、生命科学、生物工程技術、材料科学、持続的発展が可能な農業技術の各分野とされている。

 助成対象となる人材は、海外で博士学位を取得し専門領域で顕著な学術成績を挙げた留学経験者で、海外での長期滞在または永久居住権あるいは再入国資格の保有者を含む。

 また助成対象となる学術活動としては、中国国内の機関から帰国招致を受けて参加する学術会議、中国国内での共同科学研究および学術交流や国際会議、討論会、講演会、博士の共同育成、貧 困地域での技術導入および主要国有企業での技術改善等に関わる活動とされている。

 政府から経費支援を受けることができる助成内容は原則として、短期帰国のために海外から帰国する片道あるいは往復の国際旅費に限られる。

 教育部が公表した2009年の「春暉計画」の助成方案では、重点助成領域として農業、エネルギー、情報、資源環境、人口と健康、新材料、宇宙科学技術、先進製造と設備技術、インテリジェンス交通、経 済管理、災害防止、現代高等教育、コンピュータソフト技術、総合学際先端学科が示された。この基本方針に従い、2009年「春暉計画」で 示された専攻学科の方向および助成対象として認められた海外留学人材の帰国従事活動について第2-2-6表に示す。

重点助成対象
専攻学科の方向
重要農業における動植物経済性および病害発生に関する基礎生物学
農業生物資源の利用と生態系コントロール
農産品の安全管理に関する基礎研究
石炭の高効率クリーン利用に関する基礎問題の研究
オイルガス資源開発と利用に関する基礎研究
重要再生可能エネルギーの開発と利用に関する基礎研究
マイクロナノ電子の制御技術に関する基礎研究
コンピュータ仮想計算環境の研究
インターネットと情報安全体系に関する研究
コンピューター・プログラム工学
アニメーション産業の研究
気候変化と災害に関する研究
重要伝染病の基礎研究
疾病発生分子と細胞制御に関する基礎研究
中国医学理論の基礎研究
ハイテク材料の発展に関する基礎研究
助成対象活動 第2回中国・オーストラリア生物医学研究大会(南開大学
武漢光電国家実験室科学研究学術交流会(華中科技大学
西部干ばつ地区資源環境及び生態研究(蘭州大学
レアアース及びニオビウム資源効率利用研究(内蒙古科技大学)
国家中医臨床研究基地建設プロジェクト(黒竜江中医薬大学)
貴州クリーン燃焼石炭生産新工程及び総合利用研究(貴州大学
非線形発展方式及び動力システム国際学術会議(西南大学
出典:2009年教育部「春暉計画」助成方案

春暉計画学術休暇プロジェクト

 海外の高等教育機関で教育や研究活動に携わる留学人材が年々増加するにつれて、海外の学校等の休暇期間中に一時帰国して、中国の大学で教育や研究に従事することを希望する声が次第に高まった。中 国内の高等教育機関からも海外の優秀な研究者の短期指導等を受け入れたいとのニーズにも合致したため、教育部は2000年から海外留学人材の「春暉計画学術休暇プロジェクト」を追加実施することを決定した。& lt; /p>

 経費助成対象者は、海外の有名大学もしくは一般大学の有力学科で助教授以上または専業技術職に携わり、かつその成果もそれぞれの専攻分野において国内外の研究者に認められている海外留学人材である。& lt; /p>

 助成対象分野は、中国国内での重点発展領域または学際領域であることが求められ、情報科学、生命科学、材料科学、資源環境科学、農業、エネルギー、法律、経済管理学等が2000年に示され、教 育部によって中国の高等教育における学科体系の発展状況等を勘案したうえで毎年決定される。また、海外留学人材は招致を受けた高等教育機関で6ヵ月から1年間業務に従事することが条件とされている。

 教育部は助成対象となる海外留学人材の帰国のための往復の国際旅費を支給するほか、同プロジェクトにより優秀な海外留学人材の活用に取り組む高等教育機関に対して一定額の手当と補助を支出し、助教授、副 教授、教授の区分により月額5000元から8000元の手当を支給することが実施通知に盛り込まれた。

 「春暉計画学術休暇プロジェクト」は2000年に一部の大学で試験的に導入され2001年より全面実施に移された。2000年の試行実施校に指定された24大学を第2-2-7表に示す。

第2-2-7表「春暉計画学術休暇プロジェクト」試行実施大学(2000年)
北京大学 清華大学 山東大学
中国人民大学 北京師範大学 重慶大学
復旦大学 上海交通大学 大連理工大学
天津大学 南開大学 青島海洋大学
浙江大学 南京大学 中山大学
四川大学 中南大学 西北農林科技大学
東南大学 吉林大学 蘭州大学
同済大学 廈門大学 華中理工大学
出典:教育部ホームページ

③成果

 1996年の「春暉計画」の開始以来、優秀な海外留学人材を幅広い方法で一時帰国させて中国の各分野の高等専門人材ニーズに対応して、貢献させる取り組みは各方面から高く評価された。計 画の開始から2006年までの10年間に、1万2000人以上が国家の経費助成を受けて短期帰国した。

 教育部は2007年3月2日、「海外優秀留学人材の導入強化に関する意見」を公表し、その中で「国家中長期科学技術発展規画綱要(2006~2020)」の目標を実現するために、海 外優秀留学人材の帰国促進を一層推進する必要があるとの基本認識を示した。

 「春暉計画」に関しては海外優秀留学人材の短期帰国を引き続き奨励するとともに、中国内の高等専門人材ニーズがある招致機関と引き合わせて、そ れぞれの専門分野で中国社会に貢献することを促進するとしている。さらに「春暉計画」を利用した短期帰国をきっかけとして、最終的には海外留学人材が長期に帰国して、中 国国内の研究活動に従事する形につなげることを目指す方向を示した。

 また、科学技術の重要先端領域の海外優秀人材が「春暉計画学術休暇プロジェクト」を利用して一時帰国し、中国の高等教育機関での教育や研究活動に従事することを通じて国内に新興学科を生み出し、世 界一トップレベルの先端学科体系を構築することを強く奨励すると明記した。

 中国政府は高等教育人材の海外留学について、基本的に優秀人材が留学に行くことを支持するとともに、その後帰国して中国の発展に貢献することを奨励する方針を表明している。この基本方針のもと、教育部は「 春暉計画」の管理方法をより整備して経費投入額を拡大し、実施効果の評価を強化しながら継続的に発展させていく方針である。


さくらサイエンスプランウェブサイト

さくらサイエンスプランウェブサイト

 

中国関連ニュース 関連リンク

オリジナルコンテンツ

柯隆が読み解く

2014/2/18更新
「中国の歴史問題」

富坂聰が斬る!

2013/12/27更新
「中国賃金事情」

和中清の日中論壇

2014/2/3更新
「失望」に潜む米国のメッセージと日本の「積み木崩し」

田中修の中国経済分析

2014/2/7 新コーナー開設
「中央経済工作会議のポイント」

服部健治の追跡!中国動向

2014/2/27 新コーナー開設 「安倍総理の靖国神社参拝に想う(上)」

川島真の歴史と現在

気鋭の研究者が日中関係を歴史から説き起こす。幅広い視点から新しい時代の関係を探る。

科学技術トピック

New

2014/3/5更新
「赤外線カメラと簡牘資料の日中共同研究」
工藤 元男

取材リポート

New

日中関連、科学技術関連のシンポジウム・講演等を取材し、新鮮なリポートをお伝えします。

中国の法律事情

New

2014/3/7更新
「百度(バイドウ)の著作権侵害をめぐる攻防の結末」朱根全

日中交流の過去・現在・未来

日中交流のこれまでの歩みとこれから

日中の教育最前線

日中の教育現場の今をレポート

中国国家重点大学一覧

 

中国関連書籍紹介

New

2014/3/12 書評追加掲載

文化の交差点

New

2014/3/18更新
「日本における中国古代絵画」朱新林

中国実感

日本人が実感した中国をレポート

印象日本

中国が日本に滞在して感じたことをレポート

CRCC研究会

過去の講演資料、講演レポート

CRCC中国研究サロン

過去の講演資料、講演レポート

最新イベント情報

アクセス数:31043468