1.大学の設置

(1)概要

 中国で大学を設置するには、教育行政の基本法である「中華人民共和国教育法」(1995年9月1日施行)と「中華人民共和国高等教育法」(1999年1月1日施行)の規定に従って、大 学の分類ごとに定められた設置条例等の基準を満たすことが必要である。

 「中華人民共和国教育法」は、国が教育事業の発展に関する基本計画を策定し、企業その他の社会団体が学校を設置・運営することを奨励する方針を示すとともに、い かなる組織や個人も営利目的で学校を設置することは認められないと規定している。学校の設置を申請するための基本条件として、①運営組織と管理規定を有すること、②資格を有する一定数の教師がいること、③ 所定の基準を満たす教育施設・設備を有すること、④必要な運営資金および安定的な財源を有すること――を定めている。また国家の規定で定める場合を除き、学長あるいは学校運営の主要な管理責任者は、中 国国籍を持ち中国に居住している者でなければならないものとされている。

 高等教育機関の設置に関する審査および承認は国務院の教育行政部門である教育部が行い、専科大学については国務院から授権された省、自治区、直轄市の人民政府が承認することができるものとされている。ま た教育部は、設置承認を受けた大学が関連法令により定められた条件を満たさなくなったと判断した場合には、当該大学の設置承認を取り消す権限を有する。

(2)普通大学

 「中華人民共和国高等教育法」は、高等教育を本科教育と専科教育に分類しており、それぞれの教育を行う本科大学および専科大学の大部分は教育部、中央政府各部門、および地方政府によって設置されている。普 通大学の設置基準や申請、承認手続き等は、1986年12月15日に公布された「普通大学設置暫定条例」(「普通高等学校設置暫行条例」)の規定に基づいて行われる。また、教育部は2006年9月28日、本 科大学における教育の質の向上を図るため、新たに「普通本科学校設置暫定規定」(「普通本科学校設置暫行規定」)を公表し、設置および運営基準の強化を行った。

①本科大学

 2006年に施行された「普通本科学校設置暫定規定」は本科大学を対象として、従来の「普通大学設置暫定条例」で 5000人以上とされていた学校当たりの学生数を8000人以上に引き上げて教育規模の拡大を図る一方で、従来基準がなかった大学院生の在籍数について学部在校生の5%以上とすることや、専 任教師1人に対する学生数を18人以下とすること等、大学教育の質の向上を狙った設置・運営基準の強化を盛り込んだ。なお、同暫定規定は本科大学の名称に関する条項を設け、校名に「中国」、「中華」、「国家」等 の文字を入れることや、個人の名前を入れること、あるいは当該学校が所在する場所以外の省、自治区、直轄市の地名を入れることを禁止している。

 第3-1-1表に本科大学の設置基準の概要を示す。

第3-1-1表 本科大学の設置基準
学生数規模
  • 全日制の在学生数8000人以上。
  • 大学院生数が全校在学生数の5%以上。
学部と学科
  • 人文科学(哲学、文学、歴史学)、社会科学(経済学、法学、教育学)、
  • 自然科学(理学、工学、農学、医学、管理学)のうち3つ以上の学部を有すること。
  • 各学部に3つ以上の専攻を有すること。
  • 各学部の全日制の在籍学生数が全校学生数の15%以上であること。
  • 修士学位を授与できる学科を2つ以上有すること。
教師体制
  • 専任教師1人に対する学生数が18人以下であること。
  • 兼任教師数は専任教師数の4分の1以下であること。
  • 一般必修課程および専門課程の各科目につき専任教師が2人以上いること。
  • 専攻必修課程の各科目につき専任教師が1人以上いること。
  • 専任教師のうち修士以上の学歴を持つ者の比率が50%以上であること。
  • 専任教師のうち博士以上の学歴を持つ者の比率が20%以上であること。
  • 専任教師のうち教授が100人以上いること。
研究水準
  • 教育部による教育レベル評価で「良好」の成績を得ること。
  • 直近2年間の教学成果評価で国家レベル一等奨、二等奨あるいは省レベル
  • 一等奨を2回以上獲得すること。
  • 直近5年間の科学研究経費が、人文・社会学科系の大学は500万元、その他の大学は3000万元以上であること。
基礎設備
  • 学生1人当たり60㎡以上の土地を有すること。
  • 学生1人当たり校舎面積は30㎡以上であること。
  • 実験用機器設備は、理学、工学、農学、医学等の理科系学部は学生1人
  • 当たり5000元以上、人文、社会学部は3000元以上、体育、芸術学部は4000元以上を備えること。
  • 所蔵図書は、理学、工学、農学、医学等の理科系学部は8万冊以上、人文、社会学部は10万冊以上、体育、芸術学部は8万冊以上を備えること。
  • 実習施設として、理学、工学、農林等の学部は実習工場・農場等の実習基地を備えること。
  • 師範大学、教育学部は実習用の付属学校を備えること。
  • 医学部は直属の付属医院を備えること。
出典:「普通本科大学設置暫定規定」(教発[2006]18号)

②独立学院

 「普通本科大学設置暫定規定」は、対象となる普通本科教育を行う高等教育機関として、本科大学とともに「独立学院」を加えている。「独立学院」は、学 位授与権限をもつ普通本科大学が企業その他の社会団体と共同で設置した高等教育機関で、本科教育を主に実施する。国公立の本科大学が共同で開設するため国家の財政経費が一部使用され、民 間団体や個人により設立される私立学校である「民弁大学」とは異なる形態の高等教育機関である。

 「独立学院」は本科教育を行い、学位を授与することが認められるが、普通本科大学よりも設置基準は緩和されている。学生数規模は5000人以上とされており、学 部は1つ以上有すればよいため単科の学院としての設置が認められる。一方で教育の質を確保するため、教師体制や基礎設備の面では一定の基準が定められており、独 立したキャンパスや基本施設を独自に備えることが条件とされている。

 第3-1-2表に「独立学院」の設置基準の概要を示す。

第3-1-2表 独立学院の設置基準
学生数規模
  • 全日制大学の在学生数5000人以上。
  • 但し、芸術、体育およびその他特殊学科の場合は教育部の承認により、この限りではない。
学部と学科
  • 人文科学(哲学、文学、歴史学)、社会科学(経済学、法学、教育学)、
  • 自然科学(理学、工学、農学、医学、管理学)のうち1つ以上の学部を有すること。
  • 各学部に3つ以上の専攻学科を有すること。
教師体制
  • 開校時に専任教師数が280人以上いること。
  • 専任教師のうち修士以上の学歴を持つ者の比率が30%以上であること。
  • 専任教師のうち教授が10人以上いること。
基礎設備
  • 学校用地として33万3500㎡の土地を有すること。
  • そのうち校舎面積が15万㎡以上であること。
出典:「普通本科大学設置暫定規定」(教発[2006]18号)

③専科大学

 専科大学の設置については、1986年施行の「普通大学設置暫定条例」による規定が適用される。専科大学は、「中華人民共和国学位条例」(1981年施行)により学位授与権限がないものとされている。社 会の幅広い分野の専門知識と職業技能を修得することを目的とした高等教育機関であり、専科学校の設置者は地方政府が大部分を占めている。設置基準についても、学 生数は1000人以上で単科大学としての設置が認められるとともに、教育規模や専任教師の体制についても、学校の所在地や学科の特殊性に応じて教育部から個別承認を得ることで緩和されるものとされている。& amp; amp; amp; amp; lt; /p>

 第3-1-3表に専科大学の設置基準の概要を示す。

第3-1-3表 専科大学の設置基準
学生数規模
  • 全日制大学の在学生数1000人以上。
  • 但し、辺境地に所在する等の特殊な理由がある場合は教育部の承認により、この限りではない。
学部と学科
  • 人文科学(文学、歴史、哲学、芸術)、社会科学(政治
  • 法律、経済、教育
  • 体育)、自然科学(理科、工科、農林、医薬)のうち1つ以上の学部を有すること。
教師体制
  • 一般必修課程および専門課程の各科目につき「講師」以上の専任教師が
  • 2人以上いること。
  • 専攻課程の各科目につき「講師」以上の専任教師が1人以上いること。
  • 専任教師全体に占める「副教授」以上の割合が5%以上であること。
  • 専科大学では兼任教師数は専任教師数の3分の1を超えてはならない。
  • 職業大学では兼任教師数は専任教師数の2分の1を超えてはならない。
  • 但し、辺境地に所在したり、特殊な学科である等の理由により上記基準を満たすことができない場合は、教育部の承認により、この限りではない。< /li>
基礎設備
  • 所蔵図書は人文、政治
  • 法律、経済大学は5万冊以上、理科、工科、農業、医科大学は4万冊以上を備えること。
  • 専攻科目の性質の応じた実習施設として、理学、工学、農林等の学部は実習工場
  • 農場等の実習基地を備えること。
  • 師範大学、教育学部は実習用の付属学校を備えること。
  • 医学部は直属の付属医院を備えること。
出典:「普通大学設置暫定条例」(国発[1986]108号)

(3)成人大学

 成人大学は、放送テレビ大学、農民大学、管理幹部学院などの各種の職業大学であり、全日制の他に通信教育や夜間学校などの多様な方式で教育が行われる。成人大学の設置基準は、1 988年4月9日に施行された「成人大学設置暫定規定」および1992年に国家教育委員会(当時)から発表された「成人大学設置暫定規定の問題点に関する補充規定」によって定められている。

 成人大学は、地域社会の様々な産業で仕事に従事しながら学習する成人の学生を想定している。このため学生数規模や学科の設定といった学校の設置基準に関して、教育部の承認を前提として、よ り柔軟性を持たせたものとなっている。「成人大学設置暫定規定」は地域の成人大学間の連携や、成人大学と全日制普通大学との連携による様々な学習形式を行うことを奨励している。

 第3-1-4表に成人大学の設置基準の概要を示す。

第3-1-4表 成人大学の設置基準
学生数規模
  • 在学生数800人以上。
  • 在学生のうち高等学歴教育(成人専科、成人本科)の学生が300人以上。但し、特殊な状況がある場合は教育部の承認により、この限りではない。
学部と学科
  • 地域社会および各種産業の人材ニーズに応じて、専攻学科の内容と規模を決定し、3つ以上の専攻学科を有すること。
教師体制
  • 兼任教師数は専任教師数の3分の2以下であること。
  • 成人専科、成人本科の専攻学科は、兼任教師数は専任教師数の3分の1以下であること。
  • 専任と兼任を含めて教師1人に対する学生数が8人以下であること。
  • 専任と兼任を含めて教師が100人以上いること。
  • 専任教師が60人以上いること。
  • 専任と兼任を含めた全教師のうち副教授以上の教師が5%以上いること。
  • 各専攻学科に最低1人以上の副教授以上の専任教師がいること。
基礎設備
  • 校舎の建築面積は以下を基準とすること。(単位:㎡/学生1人)

    成人大学の類別 理工系 文系(経済・法律)
    1.教室 3.53 2.28
    2.図書館 2.23 2.42
    3.実験・実習場所 11.07 1.27
    4.学校管理事務室 2.64 2.62
    5.学生宿舎 6.50 6.50
    6.学生食堂 1.41 1.41
    7.教職員食道 0.25 0.25
    8.生活余暇スペース 4.53 4.53
    1-8.合計 32.16 21.28
  • 所蔵図書は、理工系の学校は6万冊以上、文系(経済・法律)の学校は7万5000冊以上を備えること。
  • 教育に必要な実習、実験の80%以上を自校の独自の設備で行うことができるよう実習用機器設備を備えること。
出典:「成人大学設置暫定規定の問題点に関する補充規定」(教計[1992]223号)

(4)民弁大学

 民弁大学の設置は、「民弁大学設置暫定規定」(1993年8月17日施行)の規定に基づく。国や地方の政府部門ではなく、民間の企業その他の社会団体もしくは個人の資金によって運営される民弁大学は、従 来の国公立大学との関係において法的な位置づけが不明確であったが、2003年9月1日に公布された「中華人民共和国民弁教育促進法」によって、国公立大学と同等の高等教育機関としての法律的地位が認められた。& amp; amp; amp; amp; lt; /p>

 「民弁大学設置暫定規定」は、国家が専科教育を行う民弁大学の設置を奨励することを明記しており、2007年までに設立された民弁大学295校のうち約9割の265校が専科大学となっている。同規定は、本 科教育を行う民弁大学を設立する場合には、普通大学の設置に適用される「普通大学設置暫定条例」の基準を参照して承認審査を行うことが規定されている。

 第3-1-5表に民弁大学の設置基準の概要を示す。民弁大学は、学校の設置にあたって、国公立大学と同様に独自の学校用地と校舎や図書館、実験機器設備を備えることが求められる。「民弁大学設置暫定規定」a a a a l / は、開校資金の調達が困難な民弁大学の設置主体を想定し、現在使用されていない学校や機関等の土地および建物施設を活用することを認めている。また、図書館や実験設備についても、長 期の利用契約を締結する等、l 安 定的な利用が確保されることを条件として、他の学校や企業等の施設を利用することを認めると規定している。

第3-1-5表 民弁大学の設置基準
学生数規模
  • 在学生数500人以上。
  • 在学生のうち「高等学歴教育」(専科、本科)の学生が300人以上。
学部と学科
  • 人文科学(文学、歴史、哲学、芸術)、社会科学(政治
  • 法律、経済、教育
  • 体育)、自然科学(理科、工科、農林、医薬)のうち3つ以上の学部を有すること。
教師体制
  • 一般必修課程および専門基礎課程、専門必修課程の各科目につき「講師」以上の専任教師が1人以上いること。
  • 専攻課程の各科目につき「副教授」以上の専任教師が2人以上いること。
基礎設備
  • 独自の学校用地と校舎を有すること。校舎は原則として、教室、図書館、実験
  • 実習室、学校管理事務室を完備することを要する。
  • 校舎の建築面積は、文系(経済
  • 法律)の学校は学生1人当たり10㎡、理工系の学校は学生1人当たり16㎡を基本とし、体育活動の場所を確保しなければならない。
  • 設置する学部
  • 学科と学生数に応じて、教育の必要を満たす実験機器設備および図書を備えること。
出典:「民弁大学設置暫定規定」(教計[1993]129号)

(5)大学設置評議委員会

 国家教育委員会(当時)は1992年7月25日、「全国大学設置評議委員会に関する通知」を公表し、中国の高等教育機関の設置に関するマクロ的管理を強化することを目的として、全 国大学設置評議委員会を設置した。同評議委員会は、大学の設置を審査する教育部の諮問機関として、教育部から委託を受けて、各省、自治区、直 轄市の教育行政部門に対して設置申請が行われた普通大学および成人大学の設置計画を事前審査し、教育部に対して開校の可否に関する意見具申を実施する。

 評議委員会のメンバーは、全国人民代表大会および政治協商会議の代表者や有名な大学教授、研究機関の教育専門家等により構成され、大学の設置に関する審査・承 認を合理的かつ民主的なプロセスで行うことにより透明性を高め、高等教育制度の持続的な発展と教育の質の向上を図ることを狙いとしている。教育部の委託により、大 学の新設以外にも既存の大学の運営に大きな変更が生じた場合等に継続設置に関する評議を行うことができ、「普通大学設置暫定条例」や「成人大学設置暫定規定」、その他の関連規定に基づく行政判断の進言を行う。& amp; amp; amp; amp; lt; /p>


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