4.学位授与制度

(1)概要

 中国の高等教育機関の学位授与制度は、「中華人民共和国学位条例」(1980年2月12日施行、2004年8月28日改正)および「中華人民共和国学位条例暫定実施法」(1981年5月20日施行)に より規定されている。同学位条例は、学位を「学士」、「修士」、「博士」の3種類に区分し、国務院に設置された学位委員会が全国の大学等による学位授与を管理することを定めている。

 学位委員会は、一定の条件を備えた大学や科学研究機関に対して学位授与権限を付与し、学位授与権限を認められた大学の学科等の学位授与拠点が学位取得申請者の学術審査を行い、そ の結果を国務院および学委員会へ報告する。学位委員会は主任委員1名と数名の副主任および一般委員で構成され、委員の任免は国務院が行うものとされている。

 学位授与機関として認められた大学等は、「学位評定委員会」を設置するとともに、学位論文を審査する「学位論文答弁委員会」を組織しなければならない。「学位評定委員会」は、9名から25名で構成し、当 該大学等の教育責任者や研究者がメンバーとなる。委員は教授あるいは副教授の職位に相当する専門家であると同時に、半数以上が教授であることが必要とされている。

 学位委員会は、国務院が1981年2月に公表した「学位授与機関の審査方法に関する原則」(「関於審定学位授与単位的原則和弁法」)に基づいて、学 位の種類および専攻学科ごとに授与権限を与える大学の学科や研究機関を選定し、国務院への報告、承認に基づいて公表を行った。なお、「学位条例暫定実施法」は、学位を授与する学科単位を、「哲学」、「経済学」、「 法学」、「教育学」、「文学」、「歴史学」、「理学」、「工学」、「農学」、「医学」の10分野と規定している。

(2)学士学位

 「学士」の学位は、普通大学の本科教育課程を修了し、卒業論文の成績が所定の水準に達していることを条件に授与される。学校や専攻学科によっては卒業論文に替えて、作 品制作あるいは卒業実習により審査することが認められる。

 大学は学士学位授与の都度、学位を与えた卒業生の成績記録と卒業論文等を、学内の学位評定委員会へ提出し、学士学位取得者名簿に記載して管理する。

(3)修士学位

 「修士」の学位は、大学院の研究生あるいは大学院卒業生と同等の学力を有する者で、修士課程の筆記試験および卒業論文の口述試験に合格することを条件に授与される。筆 記試験の合格者のみが論文口述試験に進むことができ、筆記試験での不合格が1科目の場合に限って半年以内に再試験を受けることが認められる。

 修士学位論文答弁委員会は3名ないし5名で構成され、そのうち1名は当該大学以外の専門家であることを要し、主席委員は教授あるいは副教授の職位に相当する専門家でなくてはならない。口 述試験の審査方法は、委員による無記名投票方式によって行われ、3分の2の合格判定で修士学位の授与が認められる。なお、論文口述試験で不合格となった場合、答弁委員会が同意した場合には、1 年以内に論文を修正して再試験を受けることが認められている。

 また、修士学位論文答弁委員会の多数の委員が、当該審査対象の論文が博士課程レベルの水準に達していると認めた場合には、修士学位を授与する決議の他に、博 士学位授与の審査を受けることを提案決議することができることとされている。

(4)博士学位

 「博士」の学位は、大学院の研究生あるいは大学院卒業生と同等の学力を有する者で、博士課程の筆記試験および博士学位論文の口述試験に合格することを条件に授与される。博士学位の申請者が、専 門の科学技術分野で重要な著作、発明、発見を有する場合に、2名の教授レベル相当の専門家の推薦があれば、筆記試験の一部または全部を免除することができる。学位授与機関は博士学位論文の審査のために、当 該分野の2名の専門家に委託して論文の学術評価を行わせ、評価報告書を論文答弁委員会の参考として提出させなければならない。

 博士学位論文答弁委員会は5名ないし7名で構成され、そのうち半数以上が教授の職位に相当する専門家でなくてはならない。また、2名ないし3名の当該大学以外の専門家が委員に加わることを要し、主 席委員は教授の職位に相当する専門家でなくてはならない。

 口述試験の審査方法は修士と同様に、委員による無記名投票方式によって行われ、3分の2の合格判定で博士学位の授与が認められる。なお、論文口述試験で不合格となり答弁委員会が同意した場合には、2 年以内に論文を修正して再試験を受けることが認められている。

 「学位条例」等によって定められた学士、修士、博士の各学位の学術水準の到達レベルの比較を第3-1-8表に示す。

第3-1-8表 学士、修士、博士の学術水準の到達レベル
学士 専攻学科水準
  • 専攻学科に関する基礎理論、専門知識および基本技能を習得する。
  • 専攻学科に関する科学研究あるいは専門技術分野の業務に従事する基礎的な能力を具備する。
修士 専攻学科水準
  • 専攻学科に関する基礎理論を深く理解し体系的な専門知識を習得する。
  • 専攻学科に関する科学研究あるいは専門技術分野の業務に独立して従事する能力を具備する。
外国語
  • 一種類の外国語を習得し、専攻分野の外国文献を精読できるレベルの能力をもつ。
博士 専攻学科水準
  • 専攻学科に関する広範な基礎理論と体系的で深い専門知識を習得する。
  • 専攻学科の分野で独立して科学研究に従事できる能力を具備する。
  • 専攻学科の分野で科学研究や専門技術の創造的な成果を生み出す能力をもつ。
外国語
  • 二種類の外国語を習得し、ひとつは専攻分野の外国文献を精読できるとともに、一定の作文能力も有する。
  • 第二外国語は専攻分野以外の一般文献を読む基本的な能力をもつ。
出典:「中華人民共和国学位条例」および「中華人民共和国学位条例暫定実施法」

(5)学位授与機関の評価

 国務院学位委員会は2005年4月22日、「博士、修士学位授与機関の定期評価に関する意見」を通知し、学位授与機関の教育研究レベルを維持し、学位審査の健全性を高めるため、博 士および修士学位の授与機関である大学や研究機関に対して、定期評価を実施すると発表した。

 定期評価は6年ごとに実施するものとされ、学位授与権限を取得してから6年を経過している学位授与機関が対象となった。学位授与権限を取得した後の学術研究体制の変更や人材養成の状況、ま た新たに取得した科学研究の成果と担当した科学プロジェクトの状況等の評価が行われる。定期評価の作業は、国務院学位委員会弁公室が各省級の学位委員会に委託して、省区内に所在する学位授与機関の評価を実施し、国 務省学委員会から委託を受けた専門家チームが必要に応じて実地確認等を行い、評価結果をとりまとめて国務院学位委員会へ報告する。軍事学科の学位授与機関の評価は、軍隊内に別途設置された学位委員会が実施する。& lt; /p>

 定期評価の結果により国務院学位委員会は、学位授与機関の継続の可否を決定する。学位審査の体制や研究生の育成状況に問題がある場合、期限を決めて改善を勧告し、2年後に再評価を受けさせる。な お問題が改善されず、学位授与機関としての設置基準を満たすことができないと判断された場合は、学位授与権が取り消される。

 2009年2月29日付「新華網」によると、国務院学位委員会は清華大学医学部の中国西洋医学結合臨床学科を含む4つの学科の博士学位授与権限を取り消した。2 005年に行われた定期評価で22の博士学位授与機関が問題点の指摘を受け、2年以内の改善を指導されていたが、国務院学位委員会から委託を受けた専門家チームによる再評価の結果、4 つの学科が不合格と判定されて学位授与権限が取り消された。

 国務院学位委員会は2006年1月の学位委員会第22回会議で、1998年以前に承認された2106の修士学位授与機関に対する定期評価の結果を公表した。このうち合格とされたのは2009で、9 7が問題点の指摘を受け、17の学位授与拠点が自主的に授与権限を返上した。残りの80ヵ所に対して2年以内に再評価を行い、学位授与の継続の可否が判定される。


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