5.大学教員制度

(1)教師資格制度

 「中華人民共和国教師法」(1994年施行)は、初等教育から高等教育まで各段階の教師の資格制度について規定しており、大学教師の資格は大学本科課程卒業以上の学歴を有するか、所定の大学教師資格試験に合格した者が申請することができる。「教師資格条例」(1995年施行)では、大学教師資格試験を受験する者は本科大学で専攻学科を修了した者でなければならず、受験申請時に2名の当該学科の教授もしくは副教授の推薦が得られることを条件としている。

 大学教師の資格は、教育部が1960年3月7日に公表した「大学教師職務名称確定および昇格方法の暫定規定」(「国務院関於高等学校教師職務名称及確定与提昇弁法的暫定規定」)によって「助教」、「講師」、「副教授」、「教授」の4つに職階に区分されており、各資格の職責内容は第3-1-9表に示すとおりである。

 大学教師の資格は教育部の指導監督の下で、国務院あるいは省、自治区、直轄市の教育行政部門が設置した大学の教師職務審査委員会が認定し、主管する教育行政部門の承認を受けることとされている。

第3-1-9表 大学教師資格の職階区分
資格 職責内容
助教 1.学生の補講、課題作成の評価、学生のクラス討議、卒業論文の指導等を行う
2.学生の実験、実習、社会調査等の活動を指導する。
3.学生の思想政治活動および科学研究活動の指導管理を行う。
4.教育方法の研究や社会サービス等の技術開発に参加する。
講師 1.1科目以上の一般課程の講義を担当、クラス討議、実習、社会調査、卒業論文の指導等を行う。
2.実験活動を指導、実験教材や実験指導書を作成する。
3.学術研究活動に参加、技術開発、社会サービス活動、教材や参考書の作成や審査に参加する。
4.必要に応じて教授や副教授の研究生や教育実習生の指導を補助する。
5.学生の思想政治活動および科学研究活動の指導管理を行う。
6.必要に応じて補講を行い、実験、実習、課題作成の評価等、学生の教育活動を指導する。
副教授 1.1科目の基幹課程あるいは2科目以上の一般課程の講義を担当する、クラス討議、実習、社会調査、卒業論文の指導等を行う。
2.学生の思想政治活動および科学研究活動の指導管理を行う。
3.担当の学科分野に関する学術動向を把握し、学術研究活動に参加、必要に応じて学術論文の審査に参加する。
4.新教材や参考書の作成、教育方法の研究に参加する。
5.実験活動を指導し新たな実験手法や実験内容を研究する。
6.必要に応じて修士研究生や教育実習生の指導を実施し、教授による博士研究生の指導を補佐する。
7.必要に応じて補講を行い、実験、実習、課題作成の評価等や学生の教育活動を指導する。
教授 1.副教授の職務範囲の他、副教授以上の高いレベルの職責を果たす能力を有すると認められること。
2.大学の科学研究活動を指導し、博士研究生の指導を行う能力を有すること。
出典:「大学教師職務試行条例」から抜粋(教育部ホームページ「高等学校教師職務試行条例」

(2)「任職」制度

 「大学教師職務試行条例」は、大学教師の「任職」は大学による招聘または任命制度によるものと規定している。大学への教師の配属は、国が策定する計画に基づいて教員志望の大学卒業生または大学院卒業生が割り当てられ、配属された大学と改めて就任契約を結ぶ形が多かった。しかし、1985年の「教育体制改革に関する党中央の決定」以降は、教員志望学生の就職の自由化が進み、大学が必要とする人材を自主的に公募する機会が増えている。

 大学は学科の新設や学生数増加への対応等の必要に応じて教師を採用する場合、学長を責任者とする教師招聘委員会等によって候補人材の選定を行い採用を決定する。就任する教師と大学は「教師法」により、双方平等の立場で主体的に、職責内容や待遇条件、在職任期等につき合意して任用契約書を交わさなければならない。大学教師の任期は「大学教師職務試行条例」によって一般に2年ないし4年とされているが、延長を妨げないものとされている。

 大学教師資格の職階区分は、それぞれに就任条件が定められており、一定の在職年数と学術面での実績を挙げることが求められる。大学教師資格の就任審査と承認は教育部が主管し、教育部の指導監督の下に省、自治区、直轄市の教育行政部門は、大学教師職務審査委員会を設置して主管する大学の教師資格の審査承認を行う。

 大学教師の就任審査は、「大学教師職務審査組織規定」が定めている。教師の資格審査のために、各大学は学長を責任者とする教師職務審査委員会を設置する。同委員会は、主任1名、副主任2名ないし4名、および15名ないし25名の一般委員によって構成し、全体の3分の2以上が教授および副教授の職位にある者でなければならない。また各委員の任期は3年を超えてはならないものとされている。

 同委員会は下部組織として学科評議委員会を設置して、当該学科の専門家による意見を求めることができる。同下部組織は5名ないし9名の副教授職相当以上の専門家で構成され、2分の1以上が教授でなければならない。

 各大学の教師職務審査委員会は、助教の就任資格については独立して決定を行うことができ、講師の任職資格については審査・承認した内容を、地方政府の教師職務審査委員会へ届け出を行う。副教授および教授の資格審査については、大学内での審査意見を取りまとめて提出し、主管部門である地方政府の教育行政部門あるいは国務院の教師職務審査委員会が審査、承認を行う。各レベルの教師職務審査委員会は3分の2の出席により有効に成立する。審査手続きは審査対象者に対する評議意見を十分討議した後に無記名投票を行い、過半数の承認により就任が可決される。

 「大学教師職務試行条例」に規定された教師資格区分ごとの就任条件を第3-1-10表に示す。各職階へ任職するには一定の在籍年限が定められているが、教育研究面で極めて優秀な実績を挙げた者については就任条件に定める学歴や在職年数に関わらず、上位の資格区分へ登用することが認められている。

第3-1-10表 大学教師資格の就任条件
資格 就任条件
助教 以下の一つに該当すること。
  1. 学士学位を有するか、所定の試験に合格して学士同等の教育水準にあり、1年以上の見習い期間を経て助教の職務能力があると認められること。
  2. 修士学位を有するか、学士学位を2つ有し、助教の職務能力があると認められること。この場合1年以上の見習い期間は適用しない。
講師 以下の一つに該当すること。
  1. 助教として4年以上勤務し、大学助教研修課程修了証を取得すること。あるいは修士課程の主要内容を把握し、当該専攻学科の専門知識と技術能力を修得しており講師の職務能力があると認められること。
  2. 修士学位を有するか、学士学位を2つ有し、2年以上助教として勤務し当該専攻学科の専門知識と技術能力を修得しており、講師の職務能力があると認められること。
副教授 5年以上講師として勤務し、あるいは博士学位を取得して2年以上講師として勤務し、副教授の職務能力があると認められ、かつ以下の条件を備えること。
  1. 当該学科において体系的かつ深い基礎理論と豊富な実践経験を有し、学科の発展動向を把握し、1種類の外国語に習熟していること。
  2. 教育研究面の成績が優秀で、学生の問題分析と解決力を養成する高い指導能力を有すること。
  3. 一定水準の科学論文あるいは学術著書を発表している、あるいは教育研究において造詣が深く科学技術分野での貢献実績があること。
教授 5年以上副教授として勤務し、教授の職務能力があると認められ、かつ以下の条件を備えること。
  1. 教育面の成績が非常に優秀であること。
  2. 創造性のある科学論文あるいは学術著書を発表していること、あるいは独創的な発明実績があること。
  3. 教育管理あるいは科学研究活動の管理面において、組織を指導する能力を有すること。
出典:「大学教師職務試行条例」から抜粋(教育部ホームページ「高等学校教師職務試行条例」

(3)教師の評価制度

 「教師法」は学校が教師に対する評価を行い、教育行政部門は各大学の教師に対する評価の実行を指導、監督すると定めている。評価の対象項目は、教師の政治思想、業務水準、就業態度、業務成績で、評価は客観的かつ公正に実施し、評価対象の教師本人の他に同僚の教師や学生の意見も十分に聞いて評価を判定する。評価の結果は配属、昇給、表彰等に反映されると規定されている。

 また「大学教師職務試行条例」(1986年3月施行)は、招聘された教師の業務能力、就業態度および教育成績について定期および不定期に評価を実施し、結果を評価ファイルに記録して昇進、昇給、賞罰、「任職」継続の可否の判断根拠とすると規定している。

 教育部が1979年11月に公表した「大学教師の職責評価に関する暫定規定」(「高等学校教師職責及考核的暫行規定」)は、大学教師の評価基準として大学教師資格の4区分の職責を踏まえ評価の着眼点を政治思想、業務能力および業務成績の3分野に分けて規定しており、国が示した大学教師の評価基準となっている。

 「大学教師の職責評価に関する暫定規定」が定める評価項目を第3-1-11表に示す。

第3-1-11表 「大学教師の職責評価に関する暫定規定」が定める評価項目
評価分野 評価の着眼項目
政治思想 主に教師の政治思想と道徳性、仕事態度を評価する。
  • 教職に対する責任感
  • 仕事に対する積極性
  • 科学的な事実を追求する姿勢
  • 大局観をもって協調団結する姿勢
  • 政治学習への積極的な参加
  • 社会主義規律と法規の遵守
業務能力 主に教師の教育、科学研究の業務水準と創造力を評価する。
  • 学科の基礎理論と専門知識の広さと深さ
  • 問題分析と解決能力
  • 講義内容および教育方法のレベルと効果
  • 教材や著作を作成する能力
  • 科学研究活動の水準と能力
  • グループ研究課題での貢献度
  • 学術論文
  • 報告書等の作成レベル
  • 実験指導の技能レベル
  • 外国語の能力水準
業務成績 主に教師の教育、科学研究プロジェクトの成果を評価する。
  • 教育任務に対する積極性と完成した仕事量の状況
  • 学生の研究指導への関心度
  • 教育指導方法の質を高めるうえでの成果
  • 教材考案、著作出版等の成果
  • 科学研究活動や実験での成果
出典:「大学教師の職責評価に関する暫定規定」より作成

 北京大学の王暁秋教授は「教育と職業」誌(中華職業教育社)への寄稿の中で、北京市の15大学の117名の教師へのアンケート調査の結果を引用し、大学教師の評価制度は改革の余地が大きいと指摘した。それによると、117名中、80%が現在の大学の評価制度が不合理だと感じており、66%は非常なプレッシャーを感じていると回答した。

 王教授は、多くの大学の教師評価制度が単年度の成果の量を重視して、教育よりも研究活動に、より評価の重点が置かれていると見ており、教師が短期間で成果を出すことにプレッシャーを感じ安心して学生の教育に打ち込むことができない問題点を指摘している。そのうえで各大学は教師評価制度の目的を明確化するとともに、教育事業の特殊性を考慮して教師の個性と潜在能力を生かす方向へ改革することが望ましいと述べている。教師の教育研究レベルを向上させるため各大学で評価制度が研究され、試行錯誤が続いている。


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