2.学生管理制度

(1)普通大学学生管理規定

 中国の大学生の管理に関する国家レベルの基準として教育部は1990年1月20日、「普通大学学生管理規定」を公表した。同規定は、大学の教育事業の秩序ある発展と学生の健全な育成を目的として、学生の権利と義務、学籍管理、報償と処分等について定めている。2005年9月1日付で改定が行われ、中国の社会経済および文化の発展を踏まえて、国民の権利意識の向上と国際化等の環境変化に対応して実施された。

 改定では学校と学生の権利義務の明確化が図られるとともに、学生の権利と義務に関する多くの条項が追加され、学生の合法的な権利の保障が強化された。具体的には、学校が学生の専攻学科を調整する場合は、必ず学生本人の同意を得なければならないことや、学生に重大な校則違反等があり処分を科す場合には、学校は学長会を開いて協議を行い、明確な手順によって処理を進めるとともに、学生に弁明の機会を保障すべきこと等が盛り込まれた。

 教育部学生司の林蕙青司長は、これまで大学では学生に対する処分の手続きと基準が明確でなく、学生は処分に対して陳述を行う機会がなかったことに言及し、新規定はこの点を修正して、学校が学生に対する処分を決定する前に、学生や代理人に陳述と弁護の機会を与えることを規定しており、民主的な大学運営のために重要な意義があると指摘した。

 また旧学生管理規定では、学生が入学許可を与えられて入学を保留している間、または休学している期間に他の大学を受験することは禁止されていたが、新規定では同条項は撤廃され、大学の一方的な権益が制限された。

(2)学籍管理

①入学と登録

 国および大学の規定する入試基準に基づいて合格した学生は、大学から交付された合格通知書を持参し、学校の指示に従って定められた期日までに入学手続をとる。所定の期日までに入学手続きができない場合は、休学を申し出なければならない。入学手続きを完了せず、かつ休学手続きを取らない場合または休学期限を越えた者に対しては、不可抗力等の正当な理由がない限り、入学資格を放棄したものと見なされる。

 入学手続きの後3ヵ月以内に、大学は国および大学の定める入試規定に基づいて新入学生の再審査を行う。再審査に合格した者は正式に当該大学への入学が許可されて学籍を取得することができる。再審査で不合格となった者は学校が状況に応じて処理し、入学資格を取り消す場合もある。万一、後日に不正な手段で学籍を取得した事実が確認された場合は除籍処分とするとともに、情状が悪質な場合は関連部門に報告して責任を追究しなければならないものと学生管理規定に定めている。

 新入生に健康上の問題がある場合は、学校の指定する医療機関の診断書を提出することにより入学資格を1年間保留することが認められる。但し、入学資格を保留されている間は学籍を有しない。1年間の保留期間中に健康検査基準を満たし、学校の再審査で合格と認められれば再度入学手続をすることができるが、再審査で不合格となった場合もしくは1年間の期限を超過して入学手続を行わない場合には、入学資格が取り消される。

 学籍の登録および学校の定める授業料の納付手続きは、規定に従って最初の学期が始まる前に完了しなければならず、授業料が納付されない場合は学籍登録をしても有効と認められない。家庭の経済状況が困難な学生については、学費ローンもしくはその他の形態の学資助成金を申請し、関連手続を終えてから学籍登録をしなければならない。

②休学

 「普通大学学生管理規定」は、学生が期間を分けて卒業に必要な単位を修得することを認めており、学生は大学に対して休学を申請することができる。休学が認められる回数と最長期間は各大学の規定によって定めるものとされている。

 休学が認められた期間中は大学の学籍は保留されるが、原則として大学を離れなければならず、学生としての待遇を享受することはできない。但し、病気治療のため休学する場合は、医療費等の処理につき学校の規定に従って処理することが認められる。なお、学生が休学して軍隊に入隊する場合には、退役してから1年後まで大学は学籍を保留しなければならないものとされている。

③退学

 「普通大学学生管理規定」は、退学手続きがとられる場合として、第3-2-1表に該当するケースを規定している。中途退学の処理を行う場合は、学長会議での討議により決定を承認することが必要とされ、学生本人に対して大学から書面による退学決定通知を交付するとともに、大学所在地の省級教育行政部門へ報告することが義務づけられている。退学に伴い、個人記録ファイルと戸籍はその家族の戸籍所在地に移す手続きがとられる。

 なお大学院生の中途退学の場合は、大学から所在地の省級卒業生就職管理部門へ報告し、保有する学歴と就職政策により就職が可能な者に対しては関連手続を行う。学校の定めた期限内に就職先が見つからない場合は、個人記録ファイルと戸籍をその家族の戸籍所在地に移す手続きがとられる。

第3-2-1表 学生が退学処理に該当する場合
  1. 学校が定める規定の年限内に卒業に必要な条件を満たすことができない場合。
  2. 学校が定める休学期間が満了して復学申請を提出しない、あるいは復学審査で不合格となった場合。
  3. 学校が指定する医療機関により病気または傷害のため学業の継続が困難と認められた場合。
  4. 休学手続きを行わずに連続して2週間以上、学校の規定の教育活動に出席しない場合。
  5. 学校の定める期間内に学籍登録が完了せず正当な理由のない場合。
  6. 本人が退学を申請した場合。
出典:「普通大学学生管理規定」

④処分

 学生に法律や学校綱紀の違反があった場合は、大学は矯正教育または処罰を与えなければならないとされている。普通大学学生管理規定は、警告、厳重警告、始末書、停学、除籍の5段階の処分を規定しており、第3-2-2表に掲げる事由のひとつに該当する場合、大学は学生の学籍を取消す除籍処分を行うことができると定めている。

 除籍処分を行う場合は、学生の法的権利を守るため、学長会議での討議により十分な証拠と裏づけに基づいて適切な処分を決定すべきとされ、学生本人あるいは代理人に陳述と弁明の機会を保障しなければならない。学生に対する処分が決定した場合は、学生本人に対して大学から書面による除籍決定通知を交付するとともに、大学所在地の省級教育行政部門へ報告することが義務づけられている。

 処分決定に異議がある学生は、学校より除籍決定通知を受領した日から5日以内に、学内の不服処理委員会に書面で申立てを提出することができる。不服処理委員会は学校の各管理部門の責任者、教師代表および学生代表によって構成される。

 委員会は学生の提出した申立てに関して再審査を行い、書面による申立てを受領した日から15 日以内に再審査の結論を出し、申立人に通知する。元の処分決定を変更する必要がある場合は、不服処理委員会から大学に対して申し入れを行う。

 再審査の決定内容に異議がある学生は、再審査決定書を受け取った日から15 日以内に学校所在地の省級行政部門に書面で申立てを申請することができる。省級教育行政部門は学生の申立て書を受領した日から30 日以内に、申立人の問題を処理し結果内容を回答するものと規定されている。

第3-2-2表 学生が除籍処分に該当する場合
  1. 憲法または「4つの基本原則」に違反し、安定と団結を破壊し、社会の秩序を乱した者。
  2. 国の法律に触れ、刑事犯罪を構成した者。
  3. 治安管理規定に違反して処罰を受け、情状が重大な者。
  4. 試験に関して不正行為を行い、行為が重大な者。
  5. 他人の研究成果を盗用し、情状が重大な者。
  6. 学校の規定に違反して学校の秩序を著しく乱し、他人の合法的権益を侵害し厳重な結果をもたらした者。
  7. 学校の規則に違反して繰り返し処分を受け、教育しても改めない者。
注)「4つの基本原則」とは、中国の政治における基本路線として憲法の前文に明記されている「社会主義の道」、「プロレタリアート(人民民主主義)独裁」、「共産党の指導」、「マルクス・ レーニン主義、毛沢東思想」を堅持する方針を指す。 出典:「普通大学学生管理規定」

(3)履修制度

 大学を卒業するためには学校の定める年限以内に、所定の単位を取得して教育課程のカリキュラムを修了しなければならない。科目ごとの履修は、各課程の試験にパスすることで単位が与えられ、筆記試験の他にクラス討議への参加など各種の方式による総合評価が加味され、合否の判定基準は各大学が規定する。

  学生が専攻学科の変更を希望して、大学が承認した場合には他の学科へ移ることが認められる。また大学が社会の人材ニーズの変化に対応して学科体制の変更を行う場合には、学生の同意を得れば所属する専攻学科を変更することができる。2005年の大学学生管理規定の改定で大学側の理由による学科変更の場合には学生本人の同意が必要であることが明確化された。

 学生が他の大学への編入を希望して、大学が承認した場合には他の大学へ移ることが認められ、取得済みの単位は転校先の大学へ移管される。但し大学学生管理規定は、入学1年未満である場合や専科課程から本科課程への編入は認められないと規定している。

(4)学年制度

 中国の学年制度は8月に新学期が開始し、一般に前期・後期の2学期制を採用している。 6月に後期試験を終えて休みに入り卒業時期は7月末となる。中国高等教育法により、学部教育の本科課程は4年制(医学部等、専攻によっては5年制)、専科課程は2年ないし3年制となっている。また大学学生管理規定は、学業成績が極めて優秀な学生の飛び級制度を認めている。


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