2.研究開発費

(1)科学技術経費の推移

 第5-1-5図に「中国統計年鑑」による中国の大学の科学技術経費の2002年から2007年までの推移を示す。科学技術経費には、科学研究人員の人件費や研究活動にかかる運営経費、固定資産の購入費用等が含まれ、大学による研究試験開発(R&D)経費はこの中から支出される。科学技術を重視する国家戦略に従って「科学技術経費」は、専ら研究試験開発(R&D)に使用し、その他の目的に転用することは認められない。

2007年の大学全体の科学技術経費は612億7000万元で、2006年の528億元から16%増加した。2002年から2007年までの推移で見ると一貫した伸びを示しており、2002年の247億7000元から2007年までに2.47倍に増加した。

第5-1-5図 大学の科学技術経費の推移(2002~2007年)

第5-1-5図 大学の科学技術経費の推移(2002~2007年)(単位:億元)

出典:「中国統計年鑑」(国家統計局編、中国統計出版社)各年版をもとに作成

(2)大学の科学技術経費の調達ルート

 第5-1-6図に、2007年の大学の科学技術経費の調達ルートの内訳を示す。大学の科学技術経費は、公的財政から支出される科学事業費や教育事業費に含まれる科学技術活動経費等の「政府資金」が最大の調達ルートである。次に多いのが、外部の企業からの研究委託や共同研究等により提供される「企業資金」で、3番目が個人・団体等からの寄付金や金融機関からの借り入れによる「その他資金」の順となっている。2007年の科学技術経費全体の612億7000万元に占める割合は、「政府資金」が345億4000万元で56.4%、「企業資金」が219億2000万元で35.8%、「その他資金」は48億1000万元で7.9%となっている。

第5-1-6図 大学の科学技術経費の調達ルート内訳(2007年)

第5-1-6図 大学の科学技術経費の調達ルート内訳(2007年)

出典:「中国科技統計年鑑2008」(国家統計局、科学技術部編、中国統計出版社)をもとに作成

 大学の科学技術経費の最も主要な調達ルートである「政府資金」は、長期的な傾向で見ると第5-1-7図に示すとおり、その構成割合は低下している。1990年には7割近くが公的財政支出による「政府資金」で賄われていたが、2000年に60%へ低下し、2002年以降は55%前後で推移している。「その他資金」も減少傾向にあり、「企業資金」の占める割合が年々大きくなっている。

第5-1-7図 大学の科学技術経費の調達ルート割合の推移(1990~2007年)

第5-1-7図 大学の科学技術経費の調達ルート割合の推移(1990~2007年)

出典:「科技統計報告」(第435期)、科学技術部発展計画司 2008年12月

(3)研究試験開発(R&D)経費支出に占める大学の割合

 第5-1-8図に、2002年から2007年の中国の研究試験開発経費支出に占める各部門の割合の推移を示す。2007年の研究試験開発経費支出の総額は、第5-1-2表に示すとおり3710億2000万元で、大学の支出はこのうち314億7000万元となっており、全体の8.5%を占めた。大学の研究試験開発経費は2002年の130億5000万元から2007年までに5年間で2.4倍に増加したが、中国全体の研究試験開発経費は2002年の1287億6000万元から2.9倍に増加した。このため、大学の研究試験開発経費支出の全体に占める割合は2002年に10.1%であったが、2007年に8.5%に減少した。

 研究試験開発経費の支出が最も多い企業部門は、2002年に全体の61.2%を占めていたが、年々割合が増加して2007年は72.3%に達した。反面、研究機関の研究試験開発経費支出は、2002年には全体27.3%を占めていたが、2007年に18.5%へ5年間で8.8ポイント低下した。

第5-1-8図 研究試験開発経費支出に占める各部門の割合の推移(2002~2007年)

第5-1-8図 研究試験開発経費支出に占める各部門の割合の推移(2002~2007年)

出典:「科技統計報告」(第435期)、科学技術部発展計画司 2008年12月

第5-1-2表 研究試験開発経費支出に占める各部門の状況(単位:億元)
出典:「中国科技統計年鑑2008」(国家統計局、科学技術部編、中国統計出版社)をもとに作成
研究部門 2002 2003 2004 2005 2006 2007
大学 130.5 162.3 200.9 242.3 276.8 314.7
研究機関 351.3 399.0 431.7 513.1 567.3 687.9
企業 787.8 960.2 1314.0 1673.8 2134.5 2681.9
その他 18.0 18.1 19.7 20.8 24.5 25.7
全体 1287.6 1539.6 1966.3 2450.0 3003.1 3710.2

(4)性格別の研究試験開発経費の支出状況

 第5-1-9図に、大学の2007年の研究試験開発経費支出における、「基礎研究」、「応用研究」、「試験開発」の性格別の内訳を示す。2007年の大学の研究試験開発経費支出の314億7000万元のうち、「応用研究」が161億8000万元で最も多く全体の51.4%を占めた。「基礎研究」の86億8000万元がこれに次ぎ27.6%で、「試験開発」の割合は最も少なく66億1000万元で全体の21.0%であった。

研究試験開発経費の内訳の推移を見ると、第5-1-10図に示すとおり、「応用研究」と「基礎研究」は一貫した増加を示しているが、「試験開発」は2007年に減少に転じた。

第5-1-9図 大学の性格別研究試験開発経費の支出内訳(2007年)

第5-1-9図 大学の性格別研究試験開発経費の支出内訳(2007年)

第5-1-10図 大学の性格別研究試験開発経費支出の推移(2002~2007年)

第5-1-10図 大学の性格別研究試験開発経費支出の推移(2002~2007年)

出典:「中国科技統計年鑑2008」(国家統計局、科学技術部編、中国統計出版社)をもとに作成

 第5-1-11図に、中国全体の性格別の研究試験開発経費支出に占める大学の割合の推移を示す。大学は「基礎研究」に占める割合が高く、2002年の37.7%が年々増加して2007年には49.7%に達し、5年間で12ポイント上昇した。

 FTE換算ベースの科学研究人員全体に占める「基礎研究」従事者の割合も、2007年は25万3900人の中の9万4000人が大学の研究者で全体の37.0%を占めた。中国の科学技術の「基礎研究」分野のR&D経費の約半分が大学部門によって執行されており、重要な位置を占めている。

 また、「応用研究」分野でも2002年の27.2%が2007年に32.8%と5.6ポイント上昇しており、増加傾向にある。他方、「試験開発」分野で大学の占める割合は、2002年の3.7%から2007年の2.2%に5年間で0.5ポイント低下した。

第5-1-11図 性格別研究試験開発経費支出に大学が占める割合(2002~2007年)

第5-1-11図 性格別研究試験開発経費支出に大学が占める割合(2002~2007年)

出典:「中国科技統計年鑑2008」(国家統計局、科学技術部編、中国統計出版社)をもとに作成

(5)国際比較

①大学の研究試験開発経費の規模

 第5-1-12および図第5-1-3表に、主要各国の研究試験開発経費の購買力平価換算による円ベースでの国際比較を示す。まず、国全体の研究試験開発経費の規模を見ると、アメリカ(44兆3702億円)、日本(18兆9438億円)、中国(13兆3420億円)の順となっており、中国の研究試験開発経費の規模はドイツ(8兆3039億円)を上回っている。

 大学について見ると、アメリカ(5兆8847億円)、日本(3兆4237億円)に次いでドイツ(1兆3496億円)、イギリス(1兆1571億円)の順となっており、中国は1兆1316億円でイギリスを下回った。中国の大学の研究試験開発経費は、アメリカの大学の19%、日本の大学の33%の水準となっている。

第5-1-12図 研究試験開発経費の国際比較グラフ(購買力平価換算:億円)

第5-1-12図 研究試験開発経費の国際比較グラフ(購買力平価換算:億円)

第5-1-3表 研究試験開発経費の国際比較  (購買力平価換算:億円)
注)統計年度はアメリカ、日本、中国が2007年、ドイツ、フランス、韓国、イギリスが2006年である。
出典:「科学技術要覧(平成21年版)」文部科学省をもとに作成
部門 アメリカ 日本 中国 ドイツ フランス 韓国 イギリス
大学 58,847 34,237 11,316 13,496 9,920 4,355 11,571
企業部門 319,054 138,304 96,443 58,039 32,591 33,803 27,312
政府部門 47,338 13,794 25,661 11,504 8,523 5,058 4,427
民間非営利部門 18,463 3,103 0 0 628 538 989
合計 443,702 189,438 133,420 83,039 51,662 43,754 44,299

②研究試験開発経費に占める大学の割合

 主要各国の研究試験開発経費の全体に占める各部門の割合の国際比較を第5-1-12図に示す。大学が占める割合はイギリスが26.1%で最も高く、フランスの19.2%、日本の18.1%が続く。中国は8.5%で、大学部門が研究試験開発経費の執行に占める割合は比較対象の主要国のうちで最も低い。一方で、中国は政府部門の占める割合が19.2%で主要国の中で最も高くなっている。

第5-1-13図 研究試験開発経費の各部門の割合の国際比較

第5-1-13図 研究試験開発経費の各部門の割合の国際比較

注)統計年度はアメリカ、日本、中国が2007年、ドイツ、フランス、韓国、イギリスが2006年である。
出典:「科学技術要覧(平成21年版)」文部科学省をもとに作成

③性格別の研究開発経費

 第5-1-12図に、日本と中国の大学の研究開発経費支出の「基礎研究」、「応用研究」、「試験開発」の性格別内訳の比較を示す。日本の大学は、「基礎研究」が全体の54.9%で半分以上を占めており、「応用研究」が36.3%、「試験開発」が8.9%となっている。これに対して、中国の大学は、「応用研究」が51.4%と半分以上を占める一方で、「基礎研究」が27.6%と少なく、日本の割合の半分となっている。

 また、「試験開発」の割合も中国の大学では21.0%を占め、日本の大学の割合(8.9%)の2.3倍となっている。

第5-1-14図 大学の性格別研究開発経費の日中比較

第5-1-14図 大学の性格別研究開発経費の日中比較

出典:「科学技術要覧(平成21年版)」文部科学省および「中国科技統計年鑑2008」
(国家統計局、科学技術部編、中国統計出版社)をもとに作成

(6)科学技術研究経費上位20大学

 第5-1-4表に、中国の大学の2007年の科学技術経費執行額のランキング上位20校を示す。上海交通大学(14億8488万元)、清華大学(14億1823万元)、浙江大学(11億9826万元)が上位3校を占め、第4位の同済大学(11億36万元)までが年間の科学技術研究経費の執行額が10億元を超えた。上位20大学はすべて211プロジェクトおよび985プロジェクトの両方の指定を受けた重点大学で占められている。

第5-1-4表 大学の科学技術経費執行額ランキング上位20校(2007年)(単位:千元)
出典:「2008年高等学校科技統計資料編」(教育部科学技術司、高等教育出版社、2009年4月)
順位 大学名 執行額 ルート別調達額
政府資金 企業資金 その他資金
1 上海交通大学 1,484,881 890,116 246,081 224,112
2 清華大学 1,418,232 1,239,708 611,854 350,722
3 浙江大学 1,198,268 1,065,298 660,790 87,280
4 同済大学 1,100,360 349,247 292,512 24,677
5 四川大学 808,448 307,755 438,317 15,653
6 ハルピン工業大学 806,053 899,787 429,973 1,852
7 北京大学 749,102 785,490 85,155 53,758
8 北京理工大学 704,115 691,926 181,647 25,145
9 中南大学 659,359 391,302 144,058 89,498
10 華中科技大学 636,069 593,707 271,899 25,072
11 西北工業大学 621,204 884,024 332,199 0
12 武漢大学 587,981 431,806 190,419 5,695
13 大連理工大学 584,974 262,829 249,672 19,158
14 西安交通大学 580,994 455,022 138,786 12,266
15 東北大学 573,389 102,260 17,000 9,973
16 北京航空航天大学 555,112 605,390 392,599 3,381
17 天津大学 550,113 295,054 304,612 17,299
18 吉林大学 542,624 325,278 323,601 10,423
19 東南大学 528,857 258,746 418,760 15,167
20 電子科技大学 489,907 230,610 123,838 8,364

さくらサイエンスプランウェブサイト

さくらサイエンスプランウェブサイト

 

中国関連ニュース 関連リンク

オリジナルコンテンツ

柯隆が読み解く

2014/2/18更新
「中国の歴史問題」

富坂聰が斬る!

2013/12/27更新
「中国賃金事情」

和中清の日中論壇

2014/2/3更新
「失望」に潜む米国のメッセージと日本の「積み木崩し」

田中修の中国経済分析

2014/2/7 新コーナー開設
「中央経済工作会議のポイント」

服部健治の追跡!中国動向

2014/2/27 新コーナー開設 「安倍総理の靖国神社参拝に想う(上)」

川島真の歴史と現在

気鋭の研究者が日中関係を歴史から説き起こす。幅広い視点から新しい時代の関係を探る。

科学技術トピック

New

2014/3/5更新
「赤外線カメラと簡牘資料の日中共同研究」
工藤 元男

取材リポート

New

日中関連、科学技術関連のシンポジウム・講演等を取材し、新鮮なリポートをお伝えします。

中国の法律事情

New

2014/3/7更新
「百度(バイドウ)の著作権侵害をめぐる攻防の結末」朱根全

日中交流の過去・現在・未来

日中交流のこれまでの歩みとこれから

日中の教育最前線

日中の教育現場の今をレポート

中国国家重点大学一覧

 

中国関連書籍紹介

New

2014/3/12 書評追加掲載

文化の交差点

New

2014/3/18更新
「日本における中国古代絵画」朱新林

中国実感

日本人が実感した中国をレポート

印象日本

中国が日本に滞在して感じたことをレポート

CRCC研究会

過去の講演資料、講演レポート

CRCC中国研究サロン

過去の講演資料、講演レポート

最新イベント情報

アクセス数:31043468