4大学の比較

 本章では、今回調査した4つの大学を様々な指標で比較することにより、どの大学が中国国内や国際的にどのような位置にあるかを分析する。

1.外形的な指標

(1)学生数

 大学の規模を示す指標として、在学する学生数が重要である。表5-1は、2012年時点での4大学の在学する学生数を、他の東アジアの有力大学である東京大学とソウル大学の学生数と比較したものである( 東大およびソウル大学はHPのデータ)。この表を見ると、中国の4大学は、東京大学やソウル大学の1.5倍から2倍近くの学生を擁している。とりわけ、学部学生数はそれほど違わないが、修 士学生数が中国の大学でかなりの数に上っている。

 各大学のHPの情報で世界全体を見ると、米国のトップレベル大学であるハーバード大学が総数21,000名(学部6,700、大学院14,500)、MITが11,200名(学部4,500、大 学院6,700)、カリフォルニア大学バークレー校が36,000名(学部26,000、大学院10,000)であり、英国のケンブリッジ大学が19,000名(学部12,000、大学院7,000)である。こ れらの世界トップ大学と比較しても、中国の4大学の規模は大きい。

表5-1 在学学生数の比較(2012年)

表5-1

(2)教職員数

 教職員数も、大学の規模と密接に関係している。表5-2は、2012年時点での4大学の教職員数を、東京大学およびソウル大学と比較したものである。教職員数は、東京大学やソウル大学とそれほど違わず、上 記の学生数の違いから見て、教職員1人当たりの担当学生数は中国の調査大学の方が多いと思われる。

表5-2 教職員数の比較(2012年)

表5-2

(註)北京大学の教職員数は本部職員のみ

(3)学部設置状況

 表5-3に、今回調査した大学の学部構成を示した。4大学とも総合大学で、中国教育部の分類に従ったほとんどの学部を有している。また、ここには示さなかったが、い ずれの大学も芸術関連の学部を有している。

表5-3 学部の設置状況

表5-3

(註)教育部は「本科専攻学科目録」を定め、11の大分類と大分類の下に個別の専攻学科に体系化しており、大分類が学部、個別の専攻学科が学科にあたる。 

(4)国際化の状況

 中国の大学がどれくらい国際化に気配りをしているかを示すため、表5-4に留学生数の比較、表5-5に外国人教職員数の比較を示した。東京大学やソウル大学とほぼ同等ないしはそれ以上であることがわかる。 

表5-4留学生数の比較(2012年)

表5-4

表5-5 外国人教職員数の比較

表5-5

2.科学技術インプットの指標

(1)大学の全体予算規模

 科学技術予算をどの項目で集計するかは各国ばらばらであるが、大学全体予算であれば各国での違いはそれほどない。そこで科学技術経費を見る前に、教育関連、病院関連などを含めた全体予算を比較したい。表 5-6で見ると、東京大学が、北京大学清華大学の1.5倍、上海交通大学浙江大学の2.5倍となっている。したがって、科学技術経費でも東京大学が今回調査した4大学より大きいと思われるが、物 価水準を考慮した購買力平価換算では中国の大学の方が優位に立つと思われる。ちなみに米国ハーバード大学が37億ドル(約250億元、2010年)、MITが27億ドル(約180億元、2012年)、英 国ケンブリッジ大学が8.41億ポンド(約73億元、2013年)である。カッコ内の数字はIMFレート換算であるが、購買力平価で換算すると、中国のトップ大学は世界のトップ大学と比較して、全 体予算規模でほとんど遜色ないと考えられる。

表5-6 全体予算の比較(2013年、単位:億元)

表5-6

(註)東京大学とソウル大学は、2,490億円と1.295兆ウォン(いずれも2012年)であり、15円=1元、150ウォン=1元で換算した。

(2)科学技術関係経費(2010年)

 中国の調査4大学がどの程度、科学技術予算を持っているかを示したのが、表5-7である。清華大学が少し多いが、それ以外の大学は大体27億元(15円=1元で換算して約400億円)程度である。 

表5-7 科学技術関連経費とその支出元(2010年、億元)

表5-7

(3)国内の重要プロジェクト等の指定

 中国国内における、科技部の重要プロジェクトの指定数や、重点学科等の指定数、国会傑出青年科学基金獲得者数について、以下に順次示す。今回調査を行った4大学は、いずれも相当数の指定等を受けている。 

表5-8 科技部重要プロジェクト指定数

表5-8

表5-9 重点実験室等の指定数

表5-9

表5-10 国家傑出青年科学基金獲得者数

表5-10

3.科学技術成果の指標

(1)科学論文比較

 中国調査大学の科学技術力がどの程度のものかを知る指標として、科学論文での比較を見る。表6-11は、米国トムソン・ロイターの論文比較であるが、本年2月末までの11年間の集計を見ると、単 純論文数では、浙江大学が中国大学の中で1位となっている。ただ、東京大学やソウル大学と比較するとそれほど高くない。また被引用数で比較すると、中国の調査大学は100位以下となりその差が広がる。ち なみに日本の大学では、東京大学18位に続いて、京都大学35位、大阪大学48位、東北大学81位、名古屋大学135位、九州大学149位、北海道大学165位となっており、中 国の大学のトップである北京大学の134位という位置は、日本の5番目である名古屋大学とほぼ同じとなっている。

表5-11 トムソン・ロイター社による論文数(全分野)

表5-11

 同じトムソン・ロイターのデータにより、個別分野の論文被引用数で比較すると、中国の得意分野と不得意分野が見えて来る。表5-12がそれであるが、中国の大学は化学、材料科学、工 学が非常に強いのがわかる。逆に、ライフサイエンスや医学は弱い。

 清華大学の材料科学は世界6位、工学も11位と世界トップレベルとなっており、東京大学を凌駕している。材料科学で日本トップは東北大学であり、世界7位である。

表5-12 トムソン・ロイター社による論文被引用数比較(個別分野)

表5-12

(2)Nature掲載記事数による比較

 次に科学雑誌の記事によるランキングを見る。英国の科学雑誌Natureは、NatureおよびNature関連雑誌に掲載された記事に関し、記事の著者が所属する機関別に集計して分析し、そ のランキングを年度ごとに公表している。一番新しいものは、「Nature Publishing Index – Global Top 200」であり、このデータを基に中国、日本、韓 国の大学をピックアップしたものが表5-13である。

 これで見ると、中国の大学は近年レベルアップしているものの、まだ世界トップレベルでないことがわかる。中国科学技術大学が72位で、中国の大学トップである。また中国科学院は12位で、中 国全体でトップである。

 日本の東京大学は若干低落傾向にあるが、それでもアジアでトップとなっている。他の日本の大学のランクを見ると、京都大学26位、大阪大学36位、名古屋大学65位、東北大学84位、九州大学134位、北 海道大学140位となっている。これらの傾向は、先に見たトムソン・ロイターのランキングとほぼ符合する。韓国の大学はあまり上位にランクされておらず、ヨンセイ大学の141位がトップとなっており、ソ ウル大学は172位である。

表5-13 Natureでのランキング(2012年)

表5-13

(3)特許

 次に、科学技術研究の成果の一つである特許を見てみる。残念ながら、国際比較を行うデータがないので、中国国内だけの比較となる。特許に関しては、工学系統に強みを持つ浙江大学清華大学、上 海交通大学が強く、北京大学は特許から遠い基礎的なところに強みがあるため低いランクとなっている。

表5-14 特許申請授権件数と有効特許数の国内比較(2011年)

表5-14

(4)中国科学院および中国工程院の院士数

 直接の成果というわけではないが、優れた業績を挙げた研究者や技術者を顕彰することは世界各国で行われており、中国でも中国科学院中国工程院がその顕彰機関であり、こ れらの院士は大変な栄誉となっている。

 今回調査の4大学で見ると、北京大学清華大学が非常に多くの院士を有しており、北京大学は科学、清華大学は工学に強いという性格が表れている。

表5-15 中国科学院および工程院の院士数

表5-15

4.大学ランキング

(1)世界の大学ランキング

 中国の大学が世界的にどの位置にあるかを示す指標として、いくつかの国際大学ランキングを見てみたい。表5-16に4つの大学ランキングを示した。併せて、日本の東京大学、韓国のソウル大学が示してある。 

 QSおよびタイムズという英国系の調査では、北京大学清華大学がほぼ同等で、東京大学やソウル大学とそれほど差が無いという結果になっている。一方、上海交通大学や台湾の機関が出したランキングでは、東 京大学とは相当に距離がある結果となっている。

表5-16 各種国際大学ランキング

表5-16

出典:各ランキングのHP

 QSというのは、英国ロンドンに本拠を有するQuacquarelli Symonds Limitedが2004年からQS World University Rankingsとして発表しているランキングである。またタイムズというのは、英国系の教育雑誌であるTims Higher Educationが、2010年に上記のQS World University Rankingsから分離して発表しているランキングである。これらの二つは傾向がよく似ている。

 一方、今回の調査対象大学でもある上海交通大学の世界一流大学研究中心は、2003年よりAcadmic Ranking of World Universitiesを、国 際大学ランキングとして発表している。

 最後に、台湾にある「高等教育評鑑中心基金会」という財団法人が、世界から500の大学を選び、科学論文のデータベースであるESI(Essential Science Indicators)を 分析することによりPerformance Ranking of Scientific Papers for World Universitiesを、国際大学ランキングとして公表している。

(2)中国国内のランキング

 国内だけの比較で、ランキングを示したものとして、ISTIC(中国科学技術情報研究所)と武漢大学による調査結果を表5-17に示した。これによれば、総合順位として①北京大学、②清華大学、③ 浙江大学、④復旦大学(今回調査せず)、⑤上海交通大学、となっており、北京大学は理学と医学で、清華大学は工学で強みを発揮している。

表5-17 ISTICと武漢大学によるランキング

表5-17

出典:「中国大学及学科事業評価報告2012-2013 科学出版社」

 中国の大学受験生が参考にするといわれているのが、中国管理科学研究院科学研究所武書連氏のランキングである。これを表5-18に示す。これを見ると、今回の調査4大学は上位に来ている。ただ、浙 江大学が1位となっており、国際大学ランキングや武漢大学のランキングと違っている。

 なお、5位から10位は、復旦大学(147.85)、南京大学(126.91)、武漢大学(111.40)、中山大学(111.39)、四川大学(108.18)、ハルビン工業大学(104.98)と なっている。

表5-18 武書連氏ランキング(2012年)

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出典:武書連氏主宰の「中国大学評価」課題チーム

関連資料

中国主要四大学」( PDFファイル 8.31MB )


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