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【13-024】外国企業による中国企業の買収(その9)

2013年 9月30日

康 石

康 石(Kang Shi):
中国律師(中国弁護士)、米ニューヨーク州弁護士

上海国策律師事務所所属。1997年から日中間の投資案件を中心に扱ってきた。
2005年から4年間、ニューヨークで企業買収、証券発行、プライベート・エ クイティ・ファンドの設立と投資案件等の企業法務を経験した。
2009年からアジアに拠点を移し、中国との国際取引案件を取り扱っている。

(九)外貨問題

一、中国の外貨規制の適用

 中国企業の買収において、常に念頭に置かなければならないのは、中国の外貨規制です。先進国でのM&A取引で一般的に行われているクロージング後の買収価格の調整や対象会社の債務の引受等は、中 国の外貨規制が障害となって実行可能でないリスクがあるため、留意が必要です。

 M&A取引における買収代金の支払は、中国の外貨管理法令上、貨物やサービス貿易と関連する経常項目ではなく、資本項目の取引に該当するため、より厳しい規制の対象になります。ク ロスボーダー取引において、外商投資企業における外国投資者が他の外国企業に対して持分譲渡を行う場合に、中国の外貨管理規制がかからないほか、その他の取引は全て中国の外貨管理規制を意識しながら、取 引ストラクチャーを組まなければなりません。外国企業が中国企業を買収する際、中国の国内の株主に対して買収代金を支払う場合にかかる外貨規制は、当然ながら、中 国企業が外商投資企業における外国投資者の持分を買収することにより、対外的に買収代金を支払う場合にかかる外貨規制より緩いことになります。後者の場合、外 商投資企業の持分変更に対する中国の商務部門の認可を得て、工商行政管理部門における持分変更登記を行って初めて、対外的に買収代金を送金することが可能であるため、買収代金の支払タイミングについて、上 記と異なる約束をしても実行できない点に留意が必要です。また、上述したクロージング後の買収価格の調整を契約上において約束し、中国企業が外国企業に調整価格を支払う必要がある場合、当 初商務部門が認可した買収価格を超えての対外送金を外貨管理部門が認めないリスクがあります。

 なお、中国企業が外商投資企業における外国投資者の持分を買収する取引において、対象会社が当該外国投資者に対して債務を負っている場合、買主がかかる債務を肩代わりすることはできません。こ れは中国法上、外商投資企業はその外国株主から外債を借り入れることができるが、買主としての中国企業は自らの親会社でない外国企業から外債を借り入れることができないからです。このような場合は、外 国投資者が債権を免除する代わり、より多くの買収代金を支払うか、買主が銀行経由で対象会社に委託貸付を行い、当該委託貸付による資金で、対象会社をして、外 国投資者に対する債務を返済してもらうなどのストラクチャーを取る必要があります。

二、エスクロー口座の利用

 外国企業が中国企業を買収するには、中国の商務部門の認可を必要とすることから、外国企業の立場から見れば、当然ながらかかる認可を取得する前に譲渡代金を支払うことに抵抗します。一方で、中 国の売主から見れば、認可を取得し、変更登記までしてしまえば、株主としてのステータスが変わる為、その時点で買収代金を受け取ることは遅すぎると思うこともあります。買 収代金の支払タイミングに関する両者の対立を解決するために、中国国内にエスクロー口座を開設し、契約締結後、当該口座に買収代金を入金させ、認可取得・登 記変更後の適切なタイミングで売主にリリースするスキームがよく使われています。但し、この場合でも、当該エスクロー口座の名義を誰(売主又は買主)のものにするのか、銀行に対する指図をどのようにすべきか、取 引が成立しない場合に、エスクローに入れた金額を外国の持ち出すことが可能か等の面において、エスクロー銀行と協議しながら、中国の外貨管理規制に抵触しない方法を検討する必要があります。

三、人民元による買収代金の支払い

 近年の規制緩和により、外国投資者が、中国国内からの利益配当金、持分譲渡代金、減資、清算、先 行投資回収等により取得した適法な人民元所得を利用して中国国内で再投資する場合の外貨管理部門の審査がなくなったため(「直接投資外貨管理政策の改善と調整に関する通知」国家外貨管理局、2 012年11月19日公布、同年12月17日施行)、かかる取引が従来に比べて行いやすくなりました。また、最近の人民元の国際化に伴って、中国国外の人民元預金が増えていることから、外 国投資者が国外の人民元をもって中国国内に投資することも認められるようになっています。

四、持分出資による外貨規制制約の解決

 外国企業が中国企業を買収する際、当該外国企業が中国国内にすでに設立している外商投資企業を投資ビークルとして利用したい要望が出てくる場合があります。しかしながら、買 収対象となる企業の規模が大きく、かつ、当該外商投資企業に買収資金がない場合、中国の外貨規制のため、外国企業が当該外商投資企業に増資し、当該増資金を人民元転したうえで、中 国国内の買収代金として用いる方法は利用できませんでした。但し、直近の「外商投資企業に係る持分出資に関する暫定規定」(商務部、2012年9月21日公布、同年10月22日施行)により、外国企業は、中 国国内の外商投資企業の持分をもって出資することが認められるようになりました。従って、上記のようなケースの場合、外国企業は、中国国内の外商投資企業の持分をもって、当 該買収対象の国内企業に持分出資をすることで、上記買収資金の問題を解決することができます。勿論この場合、対象会社の株主が持分出資を受け入れることが前提となります。



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