【17-16】模倣品・海賊版対策の相談件数過去最大に 相手国別では中国

2017年 6月27日  小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

 日本政府の模倣品・海賊版対策総合窓口に寄せられた相談件数が昨年、過去最大になったことが、23日公表された経済産業省の「2017年版模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告」で 明らかになった。模倣品や海賊版の被害を受けた企業は、日本全体で約1万社、産業財産権を持つ全企業の約6%に上ると推計された。また、模倣品の最大製造国であるとともに、最大の経由国、販 売提供国が中国であることを、報告書はさまざまな調査結果を示して指摘している。

 「模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告」は、2004年に政府模倣品・海賊版対策総合窓口が設けられて以来、毎年、公表されている。今回の2017年版年次報告によると、2 016年に窓口で受け付けた相談・情報提供件数は898件で、このうちインターネット取引に関連する相談・情報提供件数が572件と約64%を占める。898件という数字は前年に比べわずかに減少した。しかし、情 報提供件数を除いた相談件数に限ると、過去最高の348件となっている。このうち143件が被害を受けた権利者からの相談で、40件が模倣品などを購入してしまった消費者から、残る165件がその他の相談だった。

 相談の中身をみると、知的財産権・関連法令別の相談件数ではトップが商標権に関するもので全体の52.9%、次いで著作権20.5%、不正競争11.6%、特許権7.3%、意匠権6.1%となっている。商 品分野別に見た相談件数では、雑貨が44.7%と最も多く、電子・電気機器10.7%、運輸・運搬機器10.1%、食品10.1%、繊維9.4%、医薬品・化粧品5.0%と続く。

知的財産権・関連法令別の相談案件(327件)の割合(2016年)

図1

(経済産業省「2017年版模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告」から)

商品分野別の相談案件(159件)の割合

図2

(経済産業省「2017年版模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告」から)

 模倣品の製造国・地域が判明している76の相談件数を国・地域別に見ると、中国(香港を含む)が最も多く51.3%を占める。次いで日本(27.6%)、台湾(3.9%)、韓国(2.6%) の順となっている。

模倣品の製造国・地域が判明している相談案件(76件)の割合(2016年)

図3

(経済産業省「2017年版模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告」から)

 相談事例のうち近年の傾向を表す代表的なケースして報告は、スポーツ用品メーカー「アシックス」から情報提供された模倣被害例を紹介している。同社の登録商標「亞瑟士」をかぶせた「亞瑟士(香港)商 貿有限公司」という社名で香港にダミー会社を設立したり、ASICSというアルファベットの登録商標の文字を一部変えただけの商標を出願するといった例が、アシックス社だけでも多数あることが示されている。

 報告書が引用している特許庁の「2016年度模倣被害実態調査」によると、日本企業4,529社を対象にした調査で、回答を寄せた2,122社のうち22.4%に 相当する434社が2015年度に模倣被害を受けた、と答えた。日本の産業財産権を保有する企業は約17万社ある。特許庁の調査結果を基に模倣被害受けた産業財産権を保有する企業総数を推計すると、日 本全体で約1万社(約6%)に上るとしている。

 模倣被害を受けたと回答した434社のうち製造国・地域が中国(香港を含む)と回答したのが234社。経由国、販売提供国を中国と答えたのがそれぞれ35社、216社で、全て中国が突出して多い。ま た模倣被害の形態については、434社のうちの142社が「商標のブランド偽装」、75社が「意匠のデッドコピー」、61社が「著作のデザイン模倣」と答えた。特許庁は、中 国で製造された模倣品は中国国内だけでなく、近隣の日本、台湾、韓国をはじめ東南アジア諸国、アラブ首長国連邦やサウジアラビアなど中東地域にも輸出されていることがうかがえる、としている。

 インターネットの普及と購買スタイルの変化により、インターネット上での模倣品・海賊版被害が増加していることについても、報告は詳しく実態を明らかにしている。イ ンターネットユーザー数が今年1月時点で約7億3,000万に達したといわれる中国では、電子商取引サイトや動画サイトで多数の模倣品・海賊版が流通している。イ ンターネット関連の法制度の整備は進んでいるものの、自主削除を行う環境が整っていないことなどから、中国の大手サイトで模倣品が出回る率は依然として高い、と報告書は指摘している。

 中国で早い時期から大手電子商取引サイトで販売されている“日本製商品”に模倣品が非常に多いことは、経産省が2011年に実施した「インターネット上の模倣品流通実態調査」からも裏付けられている。こ の調査は、日本企業の製品・商品19品目を選び、中国の大手4サイトでの販売状況を一定期間モニタリングしたのに加え、一部は実際に購入して当該企業に模倣品かどうかを判定してもらうという手法をとっている。あ るサイトでは、ある日本企業の製品として売られていた自動車部品190のうち、サイト上での情報から模倣品と分かるものが24あり、実際に購入して判定した製品は全てが模倣品と分かった。結局、こ の企業製とされている自動車部品の100%が模倣品と推計されている。同じサイトでは、ある日本企業製の衣服とされた商品も100%模倣品という推計結果も得られた。結局4サイトで販売されていた19品目中、模 倣品がないと推定されたのは、ある社製の化粧品と別の社製のスタンプインキのわずか2品目にすぎない。

 中国でアニメ、音楽、コミックなどの海賊版がインターネットオークションサイトで販売される被害が増えている実態を裏付けるものとしては、文化庁が23013年3月に公表した「 海外における著作権侵害等に関する実態調査」結果が示されている。この調査結果から、オンライン上で日本製コンテンツを違法に入手・視聴する件数は、北京、上海、広州、重慶の主要4都市で年間約72億件、中 国全体では約512億件に上るという試算値が得られている。

 「2017年版模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告」は、2016年に日本税関が知的財産侵害物品として輸入を差し止めた件数も紹介している。2万6,034件あり、そのうち91.9%が 中国(香港を除く)からの輸出品だった。輸出拠点は、香港、広東、上海といった国際港湾都市が中心だが、近年は陸路を利用して東南アジア、中東、ロシアなどへ流出するルートも存在する、と日本税関は指摘している。

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