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【17-007】科学技術の変革が加速する中国の新業態形成

2017年10月12日

楊保志

楊保志(風生水起);広東省科技庁科技交流合作処副調研員

河南省潢川県出身。入学試験に合格し軍事学校に入学。26年間、軍務に就き大江南北を転戦し、その足跡は祖国の大好河山に広くおよび、新彊、甘粛、広東、広西、海南などの地域で銃を操作し弾を投擲した。メ ディア、組織、宣伝、人事などに関する業務に長年従事し、2013年末、広東省の業務に転じた。発表した作品は『人民日報』『光明日報』『中国青年報』『検査日報』『紀検監察報』『法制日報』『解放軍報』『 中国民航報』などの中央メディアの文芸・学術欄に、また各地方紙、各軍関連紙軍兵種報紙にも掲載され、『新華文摘』『西部文学』『朔方』などの雑誌や、ラジオ、文学雑誌にも採用され、“中国新聞賞”文芸・学 術欄銀賞、銅賞をそれぞれ受賞し、作品数は500篇に迫る。かつては発表を目的に筆を執っていたが、現在は純粋に「自分の楽しみ」のためとしている。

 中国では、高速鉄道とネット通販、シェア自転車、モバイル決済が「新4大発明」と言われ、新たな変化が静かに起こりつつある。これらは近い将来、私たちの暮らしを変え、さ らには私たちの人生までをも大きく変えるものとなるだろう。

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快適でスピーディーな高速鉄道は移動に新たな選択肢を与えた

 eコマースの「新購享」のプラットフォーム「昊沢系統」の提供したデータによると、90%の紙媒体の記者は将来、インターネットなどの個人メディアに圧迫されて失業することになるという。

 またモバイル決済の広まり、とりわけ顔認識による支払い技術の普及に伴い、現在使用されている現金の80%は消失し、80%の銀行員が退職を迫られる。中 国の各大型銀行はすでに60万人に及ぶ人員削減を行っているという。

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スマホをかざして消費する姿はもうどこにでも見られる

 さらにスポーツ用品メーカー「李寧(LI-NING)」は実店舗を1800店余り閉鎖し、ネット通販での販売額が実店舗を上回っている。今後3年から5年で、全国の本屋の80%、服屋と靴屋の50%が 閉鎖するとされる。

 将来的には、無人運転車が路上を行き来するようになり、インテリジェント製造が発展し、従来型の自動車工業は淘汰される。

 3Dプリンターも一般的に使われるようになり、これまでの製造業は完全に覆され、多くの労働者が失業する。フォックスコンには100万もの「ロボットの大軍」が出現すると伝えられる。す でに6万人の生産労働者が失業し、この数字は増え続けている。

 情報ハイウェイは際限なく発達を続け、オンラインのカスタマイズサービスが流行し、現在の中間業者やディーラーは存在しなくなる。インターネットは誰よりも「聡明」だからだ。

 ネット上ではこんなことが言われている。「中国移動(チャイナモバイル)は今になってやっと、本当のライバルは騰訊(テンセント)だったことに気付いたらしい」。

 似たような例は枚挙に暇がない。「ナンバー1とナンバー2が喧嘩をすると、怪我をするのは決まってナンバー3だ」という話がある。例えば漢方ドリンクの「王老吉」と「加多宝」が対決したら、「和其正」が 損をした。コカ・コーラとペプシが対決したら、「非常可楽」(国産コーラ)が消えてしまった。シェア自転車の「摩拜」(Mobike)と「ofo小黄車」が対決したら、「悟空単車」が倒産した。ス マホのアップルとサムスンが対決したら、ノキアが消えてしまった。国慶節(建国記念日、10月1日)と中秋節(旧暦8月15日、今年は10月4日)が対決したら、日曜日が隠れてしまった、なんて傑作もある。

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シェア自転車はすでに二線・三線都市に普及している

 だが本当にそうだろうか。「康師傅」と「統一」の即席ラーメンの販売数は今年、少なくとも9億食減少した。そのライバルは「白象」や「今麦郎」ではない。即席ラーメンのシェアを食ったのは、デ リバリープラットフォームの「美団」や「餓了麼」だった。

 ダブルミントのチューインガム市場はここ数年で大きく縮小した。そのライバルはエクストラではなく、「微信」(WeChat)だったと言われる。チ ューインガムが最もよく買われるのはスーパーのレジである。これまではレジに並ぶ顧客が暇を持て余しチューインガムをカゴに入れていたが、今では皆、微信のモーメンツを眺めて過ごしている。

 これまでのルートやシーンはもう通用しない。買い物習慣の変化とそのシーンの変遷で大きな影響を受けつつある従来型の経営者らは、自 分を負かすライバルが自分とはまったく関係のない業界からやって来るとは思ってもいなかっただろう。

 科学技術の発展はすでに、新業態の急速な発展を促している。

 かつて世界最大の売り上げを誇ったウォルマートも多くのスーパーを閉鎖しており、今後いかに転身するかという問題に迫られている。

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多くの実店舗が閉鎖して又貸しの広告を出している

 クラウドファンディングでも映画を撮れるようになった。『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』がヒットして興行収入が10億元を超えたのはその代表例と言える。

 中国の科学技術の発展は、広東省の2017年上半期の関連データからもうかがえる。筆者が9月26日の「広東省国家科学技術産業革新センター建設・企業研究開発機構事業会議」で得た情報によると、広 東省全省では今年上半期、新たに9529社の企業が国家級ハイテク企業への申請を行った。インキュベーターで育成中の企業は2万773社に達し、2016年から25%増加している。

 今年1月から5月までの全省の特許出願は前年同期から40.7%増加し、このうち発明特許の出願は同24%増加した。

 広東省全省の年売上高2000万元以上の工業企業のうち研究開発機構を設立している企業の割合は今年初めまでに22.7%に達し、前年から倍増した。ま た全省の主要業務収入5億元以上の工業企業ではこの割合は53.4%に達し、2015年の32.9%から大きく拡大した。この数値は年内に100%の増加を実現する見通しだ。以上の情報は『南方日報』も 同日に伝えている。

 中国では科学技術が目覚ましく進歩し、力強い発展を遂げ、新たな業態を次々に生んでいる。これからの時代に成功するには、変革に適応しなければならない。変革はチャンスであり、チャレンジでもある。あ る野心家によると、ハイテクの発展に乗れば、これからも次の5種類のお金を稼ぐことができるという。

 第一に、政策のお金。政策の追い風に乗れば、遠くまで行くことができる。流れに逆らって進めば一歩も進めない。

 第二に、法律のお金。法律が禁止していないことはなんでもできる。そう考えれば、それぞれが力を発揮できる場所はあちこちにある。

 第三に、時間のお金。人より一歩先を行けば、人より先に着くことができる。人に先んじられれば、夢は所詮夢となる。

 第四に、地域のお金。どのような商品も、文化や経済の遅れた地域に流通していく。苦労をいとわなければ、人の上に立つ人間になれる。

 第五に、外国人のお金。自国に立脚し、世界に目を向ける。「華為」(ファーウェイ)のように強敵にも挑戦しながら、「小米」(シャオミ)のように第三世界で雄を競うのでなければならない。

 「盗人にも道がある」と言われるほどだ。自分の力で金を稼ぎ、自分の知恵で金を稼ぎ、正道によって金を稼ぎ、法律を遵守していれば、すべてが許されている。

 偉大な時代の到来はいつも静かにやって来るものだ。発見に長けた人こそが、寄せてくる波の中でチャンスをつかみ、いつか時代の頂点に立つことができるだろう。

 中国の科学技術は現在、時代の潮流をリードし、世界の先頭に立っている。近い将来には、米国を追っていた中国のインターネットが、米国を越してしまう日もくるだろう。最も高価なものは、こ れまでは好立地の物件だったが、今ではアクセス量となっており、未来にはファンとなるだろう。優秀な人材は、パートナーにしない限り雇えなくなる。

 科学技術振興機構特別顧問で「さくらサイエンスプラン」の創設者である冲村憲樹氏は、「中国はいつか必ず日本を抜いて発展するようになる。すでに日本を抜いている分野もある。こ れに対応する準備はできているか」と問いを投げかける。

 私に言わせれば、中国の科学技術は長年にわたってひっそりと力を蓄えてきた。今ではもう蕾がふくらみ、後発者にもかかわらず先頭に立ち、新たな体制への進行を加速している。こ れはいたって当たり前のことで、確かな道理と言える。


写真/楊保志


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