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【14-007】中国の格差と日本の格差、どちらが問題か(その3)

2014年 4月 2日

和中 清

和中 清: ㈱インフォーム代表取締役

昭和21年生まれ、同志社大学経済学部卒業、大手監査法人、経営コンサルティング会社を経て昭和60年、(株)インフォーム設立 代表取締役就任
平成3年より上海に事務所を置き日本企業の中国事業の協力、相談に取り組む

主な著書・監修

  • 『中国市場の読み方』(明日香出版、2001年)
  • 『中国が日本を救う』(長崎出版、2009年)
  • 『中国の成長と衰退の裏側』(総合科学出版、2013年)

その2よりつづき)

中国の富裕者は米国や日本より少ない

 次に、都市住民の格差について考える。やはり想像での格差が膨らんでいる。その原因は、フォーチュン誌などが発表する富裕者情報、銀行や国有企業幹部の所得である。「あの中国で、そんなに富裕者が」との驚きが想像を膨らませる。富裕者と一般都市住民の比較で格差を語るなら、米国や日本も同じだ。むしろ日本の方が大きな格差社会である。

 中国の富裕者調査には種々の情報があり、真実がつかみにくい。招商銀行の「中国人私人財富報告」では、2012年末時点での1000万元の投資可能資産を持つ人は70万人、2010年比で20万人増である。うち5000万元以上が10万人、1億元以上が4万人である。

 建設銀行とボストンコンサルティングの調査では、2012年の600万元以上の投資可能資産を持つ家庭は174万戸、その総資産は33兆元である。フォーチュン誌発表の2012年末の全国31省の千万元富豪は105万人、億元富豪は6.45万人である。

 一方、メリルリンチ・グローバルウエスト・ウエルスマネジメントとキャップジェミニの2011年版「ワールド・ウエルス・レポート」では、世界の100万ドル以上の投資可能資産を持つ人は1100万人、米国に306万人、日本に182万人いる。野村総合研究所の調査では、日本の2011年の1~5億円の純金融資産保有世帯は76万世帯、その純金融資産総額は144兆円、5億円以上が5万世帯で総額は44兆円である。

 2012年のクレディ・スイス銀行の「グローバル・ウエルス・レポート」では、純資産100万ドル以上の富裕者は、米国が1102万人、日本が358万人、中国は96万人である。

 中国は面子の国である。政治もビジネスも人々の生活も面子で拡大する。日本人のように小さく生んで大きく育てる発想は少ない。大きく生んで目立つことを考える。だから資産の一方で多額の負債を抱える富裕者も多い。面子で負債も資産も膨らむ。中国の富裕者の背景にはそんな一面もある。

 様々な要素を考えれば、中国の富裕者数は、まだ米国や日本に比べて少ない。当然、人口当たりの富裕者は格段に少なくなる。ただ中国には大きな裏経済がある。それを考慮すれば、何とも言えない面もあるが。

誤解で伝わる都市住民の格差

 経済科学出版社の「中国上市公司高管薪酬指数報告」が中国上場企業幹部の平均報酬を掲載している。同報告の2012年の上場2310社の幹部報酬の年平均額は63.61万元である。但し各社の上位3人の平均報酬である。業種別では金融業が高く、上場銀行16社の平均は253.53万元、上場保険4社は215.99万元、上場証券18社は239.62万元だ。

 63.61万元と同年の都市住民平均可処分所得2.46万元と比較すれば26倍の格差となるが、都市住民可処分所得は子供を含む世帯の一人平均所得である。家庭の一人平均でなく、都市就業人員の平均賃金46769元と比較するなら、格差は13.7倍になる。

 日本で同じ計算をしても格差は大きい。総務省統計の2012年の5万人以上の市の世帯人員一人年経常収入は2015千円である。大和総研の2011年版役員報酬の開示現況では、東証1部上場の株式時価総額1000億円以上企業の取締役の平均報酬は39.6百万円、執行役員は46.4百万円なので、日本の格差は取締役との比較で20倍、執行役員との比較で23倍である。もし一部上場企業役員の上位3人と比較するなら、トップには数億円の報酬もあるので日本の格差は中国をはるかに超えるだろう。

 「中国上市公司高管薪酬指数報告」は、上場銀行10社の上位3人の平均報酬も掲載している。1位は平安銀行の701.33万元だ。しかし平安銀行は非国有銀行であり、全ての銀行が高いわけでもない。国有の交通銀行は101.73万元、建設銀行は105.47万元、農業銀行は106.73万元である。ただし国有銀行幹部には表の報酬の他に、特権や福利名目の裏賃金支給もある。しかしそれでも平安銀行の額にはならない。

 筆者の調査では、上海の四大国有銀行支店長の年間賃金は60万元程度、業績が良ければ賞与を含めると100万元ほどの年もある。支店科長クラスでは15年の職歴で賞与や積立金も含めて年33万元ほど。支店社員では10年の職歴で賞与も含めて20万元ほどだ。

 中国の問題は想像で拡大する。上場銀行16社幹部の平均は253.53万元だが、それは上位3人の平均である。だが日本では、「銀行幹部」が253万元や701万元の情報が表に出て、とんでもない格差となってしまう。日産自動車のゴーン社長の年収と勤労者所得を比較して批判しているようなものだ。

 日本と違い中国は変化も激しく、納得できる格差を認める社会でもあり、差が無ければ不公平にもなる社会である。そのため同じ業界でも待遇差は激しい。第一財経周刊が昨年の業界別賞与を発表しているが、グラフのように大きなばらつきがある。とかく金融業や不動産業の高額賃金や賞与が話題となるが、一人平均10万元以上の賞与支給企業の比率は金融業で2.99%、不動産業で5.36%だ。中国企業は合理的で、いい時は多く払うが悪ければ払わないので上位と下位の差も大きい。

図1
図2

その4へつづく)


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