【13-03】中国エネルギーの対外依存度

2013年10月15日

富坂聰

富坂聰(とみさか さとし):ジャーナリスト

略歴

1964年、愛知県生まれ。
北京大学中文系中退。
「週刊ポスト」(小学館)「週刊文春」(文芸春秋)記者。
1994年「龍の『伝人』たち」で第一回21世紀国際ノンフィクション大賞受賞。

著書

  • 「中国人民解放軍の内幕」(2012 文春新書)
  • 「中国マネーの正体」(2011 PHPビジネス新書)
  • 「平成海防論 国難は海からやってくる」(2009 新潮社) ほか多数

 大気汚染物質「PM2.5」の問題が冬にとどまらず秋にまで広がったことにより、今年の国慶節の連休は秋晴れに恵まれなかった都市も少なくなかった。

 そうなるといよいよ大気汚染の元凶に対する人々の不満が高まり政府も環境対策に本腰を入れざるを得なくなる。9月に入り、政府も大気汚染対策に関する計画をまとめて発表したばかりだった。

 だが、その矢先にさらに問題を複雑にする要因が中国社会にのしかかってきている。「それがエネルギーの対外依存度の高さという問題です」と語るのは、国務院の関係者だ。続けて「エネルギーを過度に外国に依存することは、安全保障の観点から見て歓迎すべきことではありません。例えば石油です。政府が依存度のデッドライン(第十二期五カ年計画において)としているのは61%ですが、このままの調子では今年中にも60%の壁を突破してしまうのではないかと懸念され始めたのです」と彼は言及した。

 その根拠となったのは、国家エネルギー局の元局長・張国宝が記者に漏らした数字だ。それによると2012年に中国国内で消費された石油は36億2000トンだったのに対して、輸入量は2億7000トンだったが、今年はそれが3億トンにまで膨らむと予測され始めたというのだ。

 食料と同じく中国がエネルギーの輸入国と聞いて違和感を覚える日本人は少なくないだろうが、その依存度がすでに6割に近づいているといえばなお驚きだ。

 そもそも中国が石油の輸入国に転じたのは1993年のことだ。その時の輸入量は全消費量のわずか6%に過ぎなかった。それが15年後の2008年には49%に達し、続く2009年には初めて50%を突破し51.3%となり、さらに2010年には53.7%を記録(天然ガスは約28%だった)するというように、年々凄まじい勢いで増え続けているのだ。

 国際エネルギー機関(IEA)の試算によれば、中国は2035年には石油の対外依存度が80%を超えると予測している。中国が石油の輸入を急ピッチで膨らませていることの背景には、中国経済が第二次産業頼りであることや、そのなかでもエネルギーを多く消費することで知られる鉄鋼、有色金属、化学工業、建材などエネルギーを最も消費する産業が全体の4割以上を占めていることが挙げられ、それゆえ先進国との比較ではエネルギー効率の悪さが際立ってしまうのである。

  • 「中国が対外依存度を下げようとすれば至極資源開発が不可欠ですが、中国の大地に眠っている石油はそのほとんどが沿岸部の海底にあり、現在の技術では掘ることはできません。そしてこの問題の最も簡単な解決方法は、わが国で最も豊富な石炭のパーセンテージを上げることです。現状でも石炭は消費される全エネルギーの約67%を占めるというほどですから……。ただ中国が石炭へとシフトすることが容易ではないのは、大気汚染という問題があるためです。現状では石炭はできるだけ天然ガスに切り替えていこうという動きになっていて、その比率を高めることはできないのです。一方、一気に環境にやさしいエネルギーにシフトしようにもそれも現実的ではありません。例えば風力発電の発電量は、いま中国が世界で最大規模になるとされますが、それでも全電力から見ればわずかに2%に過ぎないのですから……」(夕刊紙記者)

 これに追い打ちをかけるのがモータリゼーションの深化である。いま新しく市場に投入される自動車の数は毎年約2000万台に上る。この車の台数が毎年2%から3%、石油の消費量を引き上げるという。

 つまり経済発展と大気汚染に配慮すれば、最後はどうしてもエネルギー安全保障という視点を一時的に忘れるしかなくなるというわけだ。やはり中国の環境問題は一筋縄にはいかないのである。


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