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中国の太陽光発電産業の現状およびその発展

2009年3月31日

翟佐緒

翟佐緒(Zhai Zuoxu):
全国太陽光発電エネルギーシステム標準化技術委員会委員長、研究員

1965年生まれ。

長く太陽光発電、モジュール、システムおよび関連試験設備の研究と開発、プロジェクト管理などに従事。現在は中米合資会社にて技術管理を担当、天津市科学技術協会太陽エネルギー技術研究会委員。全国太陽光発電エネルギーシステム標準化技術委員会副秘書長、主任委員を歴任し、現在IEC(国際電気標準会議)のTC82技術委員会専門委員。

1.はじめに

 太陽光発電とは、半導体を用いた光起電力効果を利用し、太陽の放射エネルギーを直接電力に変換する発電方式である。発電のしくみは単純で無騒音無汚染であり、燃料の消費がなく温室効果ガスを含む物質を放出しないといったように、化石エネルギー、風力エネルギー、バイオマスエネルギーなどの発電技術と比べ、太陽光発電は最も理想的な再生可能エネルギーであるといえる。全世界でエネルギー資源の不足と環境の悪化が進む中、ここ10年間で太陽電池の生産量は1997年の125.8MWから2007年の4000.5MWに増加し、年平均41.3%の伸び率を見せた。最近5年間の年平均成長率は49.5%であり、太陽電池が深刻に不足した2006年と2007年も太陽電池生産量の年間成長率はそれぞれ42.9%と56.2%を記録したのである。また、多くの専門機関は今後50年間で太陽光発電産業の複合的成長率は依然30%以上であると予測している。1つの産業がこれほどまでに急速かつ持続的に成長するという現象は、極めてめずらしい。地球が温暖化していること、人類の生態環境が悪化していること、従来の各種エネルギー資源がしだいに枯渇し環境汚染などの問題を引き起こしていることなどから各国政府は再生可能エネルギーを重視するようになったのであるが、そのなかでも太陽光発電技術は独自の優位性を維持している。

 太陽光の放射は無尽蔵で地球上に広く分布し、地域的な影響が比較的小さい。太陽光発電は温室効果ガスや他の廃ガス等の物質を全く排出せず、環境にもよい。太陽光発電は直接光子を電子に転換し、エネルギー転換の効率が非常に高く、技術開発に大きな潜在力がある。太陽光発電の主要な原材料であるシリコンは地球上に非常に豊富に存在し、原材料の枯渇の心配がない。太陽光発電は建築一体化の実現が非常に容易であり、貴重な土地資源が節約できる。 太陽光発電システムはモジュールインテグレーション的性質を備えており、解体や移動、容量の増強が容易である。太陽光発電は太陽以外の資源が必要なく、無人のゴビ砂漠なども大型発電所を作るのに理想的な場所となる。太陽光発電は無人監視システムが可能であるので維持コストが低い。 太陽光発電システムの作業性能は安定しており信頼性が高く、使用可能年限が長い(30年以上)。

 図1は、1985年から2007年までに世界の太陽電池の生産量が急速に発展する状況を示したものである。中国もこの世界的発展の中で大きく発展し、太陽光発電産業における世界的な地位を確立した。

2.中国の太陽光発電産業の状況

2.1 中国の太陽光発電の市場への応用と発展のあゆみ

 中国の太陽光発電市場は、宇宙での利用と地上での利用の2つに大別される。

 中国は1958年に太陽電池の研究開発を始め、1959年に中国科学院半導体研究所が初めて実用価値のあるシリコン太陽電池の開発に成功した。1971年に打ち上げられた科学衛星実践1号に、初めて天津エネルギー研究所の開発した変換効率約7%(1)の太陽電池が使用され、太陽電池の宇宙利用の幕開けとなった。その後、宇宙エネルギーシステムに使用される太陽電池の技術レベルは絶えず向上してきた。1980年代初めには変換効率8-10%の一般太陽電池であったものが、80年代末には変換効率12%で高軌道の耐放射性背反射器装備のBSR型シリコン太陽電池となり、90年代中ごろには変換効率約15%で中・低衛星軌道での利用に適した背場背反射器装備のBSFR型シリコン太陽電池に、そして2000年代初めには、変換効率18%-20%の単結晶ゲルマニウム基板のガリウムひ素太陽電池となり、そして現在の変換効率26%-29%のガリウムインジウムリン/ガリウムひ素/ゲルマニウムの3層構造の太陽電池に至っている。中国の太陽電池の宇宙利用は世界でも常に先進的であり、トップレベルの水準である。例えば2008年に打ち上げられた有人宇宙船、神舟7号では、高性能BSFRシリコン太陽電池の変換効率は16%に達している。宇宙利用の市場規模は小さく、毎年百、千ワットのレベルだが、その影響力は非常に大きい。

図2 世界各国・地域の太陽光発電量の占有率

 1973年から天津港の灯台において太陽電池、蓄電池、制御装置からなる独立型太陽光発電の電力供給システムにより初めて光がともされ、地上利用も開始された。その後徐々に気象観測台、マイクロ波中継局、ソーラーカーなどといった電力のない地域あるいは特殊利用に使用されるようになった。80年代には地上利用は宇宙利用の副産物として伸展し、海外の太陽電池の主要設備や生産ライン、技術を導入して、専門的に地上用シリコン電池を生産する生産ラインが作られた。80年代の後期には、年間4.5MWの生産能力に達し、中国における太陽電池産業の初期段階を形成した。1994年、中国の太陽電池生産量は初めて1MWを超え、2002年の世界的な太陽光発電市場の急速な拡大に伴い、中国の太陽光発電産業は急成長の時代を迎えた。太陽電池の生産量は無錫尚徳などの大手企業がモデルとなり、2002年の6MWから2007年には1456MW(2)に急激に増大して世界第1位となった(図2参照)。

太陽光発電産業の発展の新しい1ページが開かれたのである。

2.2 中国の太陽光発電産業の特徴

 宇宙利用においては、材料がシリコンであれゲルマニウムであれ年間消費量はおよそ100KWの水準でしかない。要求される技術水準も価格も高いが、その利用環境が非常に特殊であるために、原材料が深刻に不足した2006、2007年においても材料供給は問題とならなかった。20世紀中国での太陽電池宇宙利用の初期においては、単結晶シリコンウエハー生産は需要を満たしていた。ゲルマニウム基板材料は、当初中国製品は材料の組み合わせや成分、表面処理などの面で海外製品と比べ大きく劣っていたため海外から輸入していたが、中国のゲルマニウム材料工場や研究所の加工技術が進歩するに従い、宇宙用ゲルマニウム基板材料の中国国内での買い付けが可能となり、中国内外の宇宙太陽電池の需要を満たすようになった。よって、 太陽電池の発展について言及する場合を除いて、 宇宙利用については以下の考察では触れないこととする。

●超急成長の状況:

図3 1999-2007 中国の太陽光発電量の推移

 2008年に各専門機関のまとめたデータでは、世界の太陽電池の生産量第1位の栄冠は例外なく中国に与えられている。2007年の中国の太陽電池の生産量は1456MWに達している(台湾の368MWを含む)。初めて日本(920MW)とヨーロッパ(1062.8MW)を追い越し、2006年の世界第3位から1位に躍進したのである。また、全世界の生産量の36.5%を占め、太陽光発電産業の発展スピードの最も速い国となった(図3参照)。中国の太陽電池の生産量のデータは表1を参照されたい。2003年からの5年間、中国の太陽電池の生産量は、毎年平均192%以上の成長率で急速に伸びている。一方、同時期の全世界の年平均成長率は52%である。

表1 2001-2007 中国の太陽電池の生産量(3)
年次 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
発電 MW 4.6 6 12 50 145.7 607.5 1456

 この主な原因は、市場の需要と莫大な産業利潤が増大し続けたからである。安定していた日本の太陽光発電市場を除き、2003年以降、まずドイツ政府による「フィードインタリフ法」政策の推進のもと、ドイツの太陽光発電市場で一気に需要が高まった。その後、イタリア、スペイン、アメリカなどの市場でも需要は拡大し、既存の太陽光発電企業は新進中国の太陽光発電企業も含めて発電能力の限りを尽くしたが、巨大な市場の要求にこたえることはできなかった。そこで、自らの生産能力を拡大することが企業にとって当然の選択となった。この選択こそが企業の生存と発展という要求を充たし、更なる利益を得るための機会を提供してくれるものであったのである。尚徳太陽能電力有限公司を例にとると、2002年にはわずか10MWであった生産能力が2008年末には100倍の1000MWにまで達している。2007年の太陽電池の生産量は363MWでQ-CELLとSHARPについで世界第3位であり、2008年の太陽電池の生産量は497.5MWに達している。

 太陽光発電産業が急速に発展し始めた初期段階において粗利益率が70%を越えたため、他業種が次々と太陽光発電に注目するようになった。太陽光発電企業が急速に増加し競争が激化した2007年でも、粗利益率と純利益率はそれぞれ20%と15%以上であり、従来の業種が10%以下の利益率であるのに比べて太陽光発電産業で得られる利益は莫大なものであった。また、太陽光発電産業には高技術、高成長、高利益という特徴があり、その他の産業から参入すれば企業の構造改革や産業調整もできることになり、これが太陽光発電という新しいエネルギー産業に参入する最大の理由となった。こうして参入企業も急速に増加した。 太陽電池のモジュール製造、太陽電池生産、シリコンインゴット/シリコンウエハーの産業規模は絶えず増大し、原材料の多結晶シリコンへの需要も急速に増加した。多結晶シリコン材料は本質的に化学工業プロジェクトであり、投資額は大きく、投資周期も長く、技術要求が高いという特徴がある。よって、多結晶シリコン材料の生産拡大の速度は太陽電池の生産速度と比べられるものではない。にもかかわらず太陽光発電産業チェーンにおいて多結晶シリコン材料への需要が増大したため、深刻な材料不足となった。材料の価格は2003年の25ドル/1000グラムから、30ドル/1000グラムへと年々高騰し、2006年の長期契約価格は、50ドル/1000グラムを超え、現物市場では200ドル/1000グラムを超えた。更に2007年12月には、現物市場で350-400ドル/1000グラムに達した。このため多くの企業が高純度多結晶シリコン材料を生産し始めた。

 確実なデータではないが(4)、2008年6月までに中国の多結晶シリコン材料企業は50社余りであり、シリコンインゴット/シリコンウエハー企業は70社余り、電池生産企業は40社余り、モジュールおよび応用企業は500社余りとなっている。

●不均衡な産業チェーンと市場構造

図4 各種太陽電池の比率

 地上太陽光発電産業チェーンは、主に太陽電池の原材料の生産、太陽電池(モジュール)の製造、太陽光発電システムの利用から成る。2007年4GWの太陽電池生産量の大多数は結晶シリコン電池であり、全体の91.3%を占める。これにシリコン基板非晶・微結晶薄膜電池、シリコン太陽電池が加わり、98%以上を占める(図4参照)。このように、現在の太陽光発電産業チェーンは依然高純度多晶シリコン、シリコンインゴット/シリコンウエハー、シリコン太陽電池、モジュール、太陽光発電システムの構築など、多くの産業の連結によって構成されている。

 中国の地上太陽光発電の初期の産業チェーンモデルは紡錘形構造をしているが、これはすなわち原材料(シリコン)と市場を海外に頼っていたということを表している。

 まず、シリコン材料についてである。2003年から2006年は、中国国内の高純度多結晶シリコン材料の年間生産量は60-70トンを維持していたが、世界の多結晶シリコン生産量の0.3%に満たず、太陽光発電に使われる多結晶シリコンはほとんど海外からの輸入に頼っていた。しかし、2006年には多結晶シリコンの生産量は290トンに増加し、2007年には1000トンの大台を突破、1130トンにまで達した。また、同時期の中国の太陽電池生産量は2003年の6MWから2005年末の145.7MWにまで増加、2006、2007年にはそれぞれ438MWと1088MW(中国大陸)にまで急速に増加し、多結晶シリコン材料の輸入率は98%から90%へと減少した。 次に、太陽光発電の市場についてである。中国の太陽光発電市場は、2002年に政府が「電気を農村まで」プロジェクトを指導した結果、太陽光発電システムの設置量が20.3MWとなった以外は、2008年まで一貫して5MW-20MWの間を行き来している。ゆえに、世界の太陽光発電市場と中国の巨大な生産量を相対的に見ると中国の市場占有率は低く、中国の太陽電池とモジュールの98%以上が海外に輸出されて世界最大の太陽光発電製品輸出国となっている。中国国内市場は、現在のところ主に辺境の電気の無い地域、街灯や庭の電灯、家庭用、公用および商業施設のシステム連係型太陽光発電所モデル、MW級以上の太陽光モデル発電所に集中しており、2008年の中国太陽光発電市場の実際の発電量は50MW強であると推測される。

 このように原材料と市場を海外に頼っているという産業構造は、業界の発展にとって深刻な問題である。市場と原材料の供給が二重に他に依存している状態では、どちらか一方にでも問題が生じれば産業に大きなリスクと損失をもたらすことになるからである。市場と原材料の供給が二重に他に依存しているという問題は、多結晶シリコン材料においては中国国内での量産化を実現したことである程度の改善は見られた。しかし、技術とコストが海外に比べて依然大きく劣っていることから、多結晶シリコン材料が供給不足どころが供給過剰な状況にあって、国内の多結晶シリコン生産企業は新たな危機に直面している。この産業構造による弊害は、世界的な金融危機の衝撃の中ですでに現れ始めている。

中国太陽光発電の注目点

●産業チェーンの完全な確立

 中国の太陽光発電産業は、ここ数年の急速な発展を経て、多結晶シリコン材料、シリコンインゴット/シリコンウエハー、太陽電池、モジュールと太陽光発電システムの構築などからなる産業チェーンをすでに確立した。また国際的な先進水準と比較してもその差は縮小しつつある。これは多結晶シリコン材料生産における産廃ガスの回収循環利用技術の解決、多結晶シリコン鋳造炉の中国国産化、太陽電池生産の鍵となるPECVD装置の中国国産化、全自動電池モジュール生産ラインの開発成功など一連の進歩にはっきり見て取ることができる。

●産業の構造矛盾はしだいに解消へ

 まず、前述の多結晶シリコン材料が輸入に頼っているという問題はすでに解決済みである。2007年の生産量はすでに1000トンを超え、生産企業は6社に達している。またデータによると、2008年4月に発足した多結晶シリコン材料の生産プロジェクトは37あり、総生産量は6.8万トンに達するという。第1期の建設は2006―2009年の間に行われ、生産開始は2008-2010年である。各プロジェクトが順調に生産までたどり着けば、太陽エネルギーの多結晶シリコン供給問題は根本的に解決されるだろう。

 また、市場問題については、2007-2008年から中国の太陽光発電市場形成の兆候が多方面で見られている。

 中国科学技術部は2007年にMW級システム連係型発電所モデル、MW級分散式連係型モデル、MW級連係型技術設備などの開発プロジェクトを提案し、中国での大型システム連係型太陽光発電、住居用連係型発電などの確立を図った。この科学技術部が提案した技術開発は現在すでに基本的に達成されている。

 敦煌の10メガワットシステム連係型太陽光発電プロジェクトの入札が正式に開始された。特別許可入札方式を採用して建設され、特別許可経営期は25年間である。この事例は大型太陽光発電所の運営モデルがすでに樹立されたことを示している。  単一の屋根では中国最大の太陽光発電所、浙江省義烏国際颯城1.295MW太陽光発電所がすでに建設され発電を開始している。この事例は商業用太陽光発電建築がすでに市場に参入し始めたことを示している。

 尚徳電力会社は新しい自社ビルとして、世界最大、PV壁面積6900平方メートル、設計容量1MWの低エネルギー消費エコロジービルを建設した。低エネルギー消費、機能性、エコロジー化の概念を建築の領域に取り入れ、企業のエコ建築新時代を切り開いたのである。 プロジェクトの計画発電容量は1GWであり、初期投資は10億元の中国最大級の混合式(非晶シリコン薄膜、結晶シリコン)のシステム連係型太陽光発電所がまもなくツァイダム盆地に建設される。

 2008年12月6日、雲南省の昆明石林に総発電容量166MWの国内最大のシステム連係型太陽光発電所の建設工事が開始された。この発電所は66MWの科学普及地区と100MWのモデル地区に分けられ、それぞれ雲南電投新エネルギー開発有限公司と和華能瀾滄江水力発電有限公司が、18、22ヶ月内に投資し建設を完成させる。この事例は一般発電システムが太陽光発電を認識し受容し始めたことを示すものである。 上海万博会場の総容量はおよそ2.91MWとなる予定であり、現在のところ中国最大の太陽光発電建築一体化のプロジェクトである。

 国家の関係機関委員は太陽光発電フィードインタリフ制度の実施の下準備を行っており、太陽光エネルギー発電を広めるため財政的補助を与えるとしている。

 中国の太陽光発電市場がいったん形成されると、中国は世界最大の太陽光発電輸出国から最大の消費国に変貌を遂げることであろう。

3.経済危機の下での中国太陽光発電の発展

 世界的な金融危機の影響が各業種へ及んでいるが、太陽光発電産業も例外ではない。太陽光発電産業に関しては、原材料と市場の問題のため、特に市場の外国への高い依存度のため、中国は最も深刻な影響を受けている国の1つとなっている。2008年の第4四半期、その影響は拡大し始めた。製品価格は平均3.4ドル/1ワットから3.1ドル/1ワットに下がり、中には2.6ドル/1ワットにまで下がったものもある。また企業の出荷量も大幅に減少し、各社企業のデータによると平均出荷量は30-40%減少しており、第4四半期の収益は急速に減少して多くの企業が損失を出すことになった。

 経済危機により企業の融資は更に困難になり、危機意識が薄く過度に規模を拡大した企業は特に大きな打撃を受けることになった。どれだけ資金の安全を保証できるかが企業が最初に考えるべき問題となったのである。景気の回復時期を考えて、太陽光発電産業は2009年の経済目標を調整し、放漫な産業拡張の歩みを緩め、内外共に調整するよう力を尽くしている。海外に対しては販売を増やして市場での占有を拡大し、中国国内に対しては効果的な管理で企業の運営コストと製品コストを下げるというのである。

 また、経済危機は業界の再編成を促し、その日は早晩到来するであろう。太陽電池産業に携わる企業のレベルはさまざまであり、多くの企業は技術の何たるかも知らず、「turn key」にのみ依拠してこの業界に参入してきたのである。危機が迫ったとき、もし業界に融け込めないままであれば、生き残ることはできない。

 さらに、経済危機の到来により多結晶シリコン材料の暴利時代は終結し、企業は再び技術、コスト、サービスを重視して優位を争う健全な道へと回帰することとなるであろう。製品価格は大幅に値下がりし、技術が低く、コストが高く、質の悪い製品は市場を失い淘汰される。原材料価格の大幅な下落は太陽光発電のコストを次第に下げ、政府による政策以外に市場の門を開くもう一つのカギとなるであろう。

 最後に、経済危機は優秀な太陽光発電企業に製品製造の構造調整を行わせ、新しい技術を試みさせる重要な契機にもなるであろう。例えば、尚徳公司は2009年に1億ドルの投資を計画しているが、これは生産能力を拡大するのではない。60MWの薄膜電池を完成させ、既存の結晶シリコン電池の生産ラインの技術を改造し、高効率のPLUTO製品を生産するのである。そして、その生産量を2008年の497.5MWから800MWに引き上げ、60%の増産を予定している。

 太陽光発電産業が、最も前途のある業種であることは周知の通りである。経済危機もこの産業の長期的な発展に影響を与えることは無いだろう。逆にこれを機会として太陽光発電産業におけるバブルが排除され、完全な業界の整合と産業チェーン構造の合理化が進み、健全なさらなる発展が促されることであろう。太陽光発電産業は真っ先に経済危機の暗雲の中から抜け出る業種の1つとなるであろう。

4.中国太陽光発電産業技術の発展の趨勢

●宇宙太陽電池技術の発展と目標

 宇宙太陽電池は引き続き、薄型、高効率へと発展を続けるであろう。具体的には;
大面積高効率の薄型シリコン電池が採用、開発されるであろう。電池の厚さ80-120マイクロメートルで、電池変換効率は17%以上で、面積は24平方メートル以上である。

 フレキシブルな薄型シリコン電池が応用、開発されるであろう。基板材料は金属薄膜かポリイミドで、電池変換効率は10%以上、仕事率は1200W/㎡である。

 高効率の多結晶化合物が採用されるであろう。電池変換効率は30%以上に達する。  また、宇宙電池技術の地上利用についても実験が試みられるであろう。特に行われる研究は、多結晶化合物太陽電池の高倍率集光下での構造、材料の適応性についての研究である。500倍の集光条件のもとでは変換効率は35%以上に達する。

●地上太陽光発電技術の発展と目標

 2009年2月5日、無錫尚徳、賽維LDK、常州天合、林洋新能源、CSI阿特斯、南京冠亜などの中国有名太陽光発電企業は、合同編集により『2012年太陽光発電一元一度電』という科学研究専門報告を科学技術部に提出した。その論旨は同業界企業の技術と市場との連携を進め、「これを契機に、2つの重要課題を完成させる。すなわち、太陽エネルギーを含む新エネルギーを国家のエネルギー戦略に引き上げ、中国太陽光発電産業を最大限に発展させる。」というものである。

 ここに地上太陽光発電技術の研究と発展の目標が非常に明確に示されている。核心となる目標は太陽光発電製品の技術と変換効率のレベルを上げること、また製品の寿命を延ばすこと、製品の発電コストを下げることである。この目標の実現をめざして太陽光発電の技術は革命的な変革を成し遂げるであろう。

 新技術、新工程は電池の発電コスト引き下げに最も有効で基本的な手段である。
安価なシリコン材料に適する電池製造工程は電池の変換効率を高めるであろう。CSI阿特斯など中国国内の多くの企業と研究機構は低効率問題の解決に努力している。 新構造太陽電池、例えばN型太陽電池は次のような特徴を持っている。すなわち200度以下で生産可能であり、大規模生産に適し、生産工程のコストは低く、生産量は高く、電池変換効率も高いという特徴を持っている。
成功が近い試験中の技術は適宜大規模生産に組み入れる。例えば、南開大学情報技術科学学院は有効面積804 cm2のガラス基板CIGS太陽電池モジュールの研究開発に成功した。これは光電変換効率は7%で、すでに基本的な産業化の条件は備えている。しかし、時期が遅れれば産業化の可能性も永遠に機会を失ってしまい、同様の技術が知られて中国国外で進歩する可能性もある。
集光技術などはコストを下げて技術を向上するのに適した技術である。例えば、常孚能源科技有限公司の第2代高倍率(1000倍)透射式集光モジュールシステムは、モジュールの材料コストは約1ワットあたり0.92ドルであり、追尾機システムのコストを加えると1ワットあたり1.53ドルである。 フレキシブル基板の三結非晶シリコン製品、フレキシブルCIGS薄膜太陽電池が中国太陽光発電産業に登場するであろう。

(2)生産ライン工程の技術を革新し、既存の製品の変換効率レベルを引き上げる。

 現在工程が成熟しているP型シリコン太陽電池について、 通過合理化電池の構造、局部拡散技術、精密グリッドライン合理化設計技術、新型減反射技術、引流接触などの技術を、合理的に生産工程に加えて、工程コストの利用効率を上げる。例えば、無錫尚徳はPLUTOの高効率技術のモジュールを採用したことで、変換効率は多結晶シリコン電池では17%、単結晶シリコン電池では19%に達し、一般のスクリーン印刷型太陽電池の輸出は12%増加した。また、南京中電の一般太陽電池の変換効率は17%だったが、高効率のSE太陽電池の技術を採用した後は、変換効率の17.5%-17.8%への引き上げが可能となった。

 作業工程のレベルを上げ、電池の厚さを180マイクロメートルから150マイクロメートルまで薄くし、電池材料の利用効率を上げ、ワット毎のシリコン材料の消費を抑える。
生産オートメーション化のレベルを引き上げ、製品の合格率を上げる。

 2009年2月24日、First Solar社は太陽電池モジュールの製造コストを1W当たり0.98米ドルまで低減することに成功したと発表した。初めて1W1ドルの壁が打ち破られたわけである。この挑戦に対して中国の太陽光発電産業がどう出るか、刮目して待ちたい。

注:

  1. 宇宙利用の太陽電池変換効率の標準テスト条件はAM0,136.7mW/cm2、25℃であり、地上利用の太陽電池変換効率の標準テスト条件はAM1.5、1000W/m2、25℃である。
  2. 台湾の368MWを含む
  3. 2006年以降は、台湾の太陽電池の生産量も含む
  4. 中国化学および物理電源業者協会の統計データによる。

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