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リハビリテーションロボット発展概要

2017年 9月28日

肖 勇 孫 平範(寧波慈星股分有限公司)

陳 罡(浙江紡織服装職業技術学院機電・軌道交通学院)

概要:

 中国の人口高齢化と身体障害の現状をターゲットとし、リハビリテーション治療に存在する主要な問題を分析し、中国国内のリハビリテーションロボット研究のキーポイントと製品開発の進展を概括し、市場のニーズに基づくインテリジェントリハビリテーションの発展という構想を提起した。未来のリハビリテーションロボットは、医療健康周辺産業の一部となり、患者のリハビリテーションに用いられるほか、データを収集し、クラウドプラットフォームで分析を行い、患者のリハビリテーション状況の医師による精確な把握を支援するものともなる。

キーワード:リハビリテーションロボット;身体障害;外骨格;人口高齢化

 身体障害の疾患に対しては、リハビリテーションロボットを用いて、理学療法や作業、運動などの療法を通じて、患者の機能障害の軽減・補足・回復をはかることが、有効な方式となる。中国における国民の収入の増加と住民の医療保健意識の増強に伴い、既存のリハビリテーション治療水準は、民衆の需要を満たすことのできるものではなくなり、リハビリテーション治療の効果と効率に対してはより高い要求がなされるようになっている。

一、リハビリテーション治療の現状

 加速度的な高齢化と寿命の延長は、一方で生理的な衰退と四肢の機動性の低下をもたらし、脳血管疾患や神経系疾患の患者が高齢者の間で増加している。そのうち片麻痺の症状は身体の障害をもたらす可能性を持っており、障害者の比率と数量の増加を招いている。2015年末までに、全国の60歳以上の高齢者人口は2億2100万人に達し、総人口の17.5%を占めるようになった。60歳以上の高齢者人口は現在、毎年5.4%を超える速度で増加を続けている。2050年までに60歳以上の人口は4億4千万人に増え、全国の総人口の34%を占めることになると予想されている。

(1)リハビリテーション医学科の開設が遅れている。「総合病院リハビリテーション医学科開設・管理指南」は、すべての二級以上の総合病院がリハビリテーション医学科を開設することを求めている。2015年の全国の病院数は2万7587院だが、実際にリハビリテーション科を持っている総合病院はわずか15%前後にすぎなかった。

(2)リハビリテーション訓練サービスが少なすぎる。2014年の全国のリハビリテーション機構は合計6914機関で、このうち身体障害のリハビリテーション訓練サービスを展開している機関は2181機関に過ぎず、リハビリテーション訓練を実施した身体障害者は36万7千人で、中国の身体障害者の1.5%にも満たなかった。

(3)リハビリテーション医師の配備が足りない。現在、リハビリテーション専門人材の不足は大きく、在職者数は国家の需要の4%にすぎない。中国のリハビリテーション医師の比率は10万人当たり約1.7人だが、先進国ではこの比率は30人から70人で、その差は30倍近くに達している。

二、リハビリテーションロボットの現状

 リハビリテーション期の異なる患者に対しては、リハビリテーションロボットは、それぞれ違った訓練を提供し、自発的な運動の意識を引き出し、リハビリテーションの時間を短縮し、リハビリテーションの効果を高めることができる。搭載された各種のセンサーで人体の運動学的・生理学的な特徴を記録し、リハビリテーションプランの改良と最適化に下支えとなるデータを提供し、リハビリテーション過程の定量化や科学化を実現する。

(1)リハビリテーションロボットの技術研究。国外のリハビリテーションロボットの研究開発は主に、欧米の先進国に集中し、産業化の程度が比較的高い。マサチューセッツ工科大学やカリフォルニア大学、スタンフォード大学などが挙げられる。国内の関連研究は上昇傾向にあり、大学、中国科学院の所属研究所、一級病院、ロボット企業などで研究されている。清華大学精密機器学科リハビリテーション工学研究センターは、歩行リハビリテーション訓練ロボット(GRTS)を研究している。構造が簡単でコンパクトで、屈曲角度が大きいなどの長所があるが、股関節と膝関節のアクチュエーターの軸方向と径方向のサイズが比較的大きい。

図

図1 国内リハビリテーションロボットの特許状況

 リハビリテーションロボットシステムの研究には主に、機械本体と力覚センサー、運動制御などが含まれる。

 機械本体。患者の病状の特徴や実現する機能、訓練モデル、安全・快適性などに基づいて設計する。訓練動作の種類を豊富にし、動作の幅を増大し、新材料応用技術を探求し、本体の重量を軽減し、装着感を高める。

 力覚センサー。患者とロボットとの間の相互の作用力をリアルタイムで調節し、患者の能動的な運動能力が不足している時には、十分な運動補助を提供する。逆の場合は、補助を適度に減らすかさらには一定の抵抗力をかけるかして、患者の残った機能を十分に発揮させる。

 運動制御。リハビリテーションロボットの時変や強結合、非線形性という動力学的な特徴を考慮し、患者の筋張力の変化や筋肉の痙攣などによって引き起こされる環境の不確定性も考えれば、運動制御システムが十分に安定していなければ、患部の二次損傷を引き起こす可能性がある。よく見られる制御ストラテジーとしては、力制御ストラテジー、力場制御ストラテジー、生体電信号制御ストラテジーがある。

(2)リハビリテーションロボット製品。初期の製品は、単一自由度のものが中心で、運動モデルも単一的で、価格が安く、幅広く応用された。英国Mike Topping社は1987年、Handy1リハビリテーションロボットの開発に成功した。その他の代表的な製品としては、米国のNUSTEPリハビリテーション装置、ドイツのTHERA-Vitalスマートリハビリテーション訓練機、イスラエルのAPTシリーズスマートリハビリテーション訓練機、イタリアのFisiotek下肢他動運動訓練機が挙げられる。

 現在幅広く応用されているのは牽引式/懸架式リハビリテーションロボットで、多機能で自動化度が高く、多くの自由度を持つなどの特徴を持つが、一般化した分類標凖はまだない。リハビリテーションを行う肢体の部位で分けると、主に、牽引式上肢リハビリテーションロボット、牽引式下肢リハビリテーションロボット、懸架式下肢リハビリテーションロボットなどがある。

 近年は、中国国内でもリハビリテーションロボット製品が続々と発売されているが、一定のシェアがあるのはミドルローエンド市場だけにとどまっている。海外の一部の国ではすでに、バイオニクスや人間工学に基づく外骨格リハビリテーションロボット時代に入っている。患者の後期リハビリテーションと障害者の補助での効果は特に卓越しており、末端牽引式のリハビリテーションロボットよりも明らかに優れており、リハビリテーションセンターなどの団体ユーザーと個人ユーザーに使われている。

図

図2 Cyberdyne外骨格ロボット

(3)市場の見通し。医療は長期にわたって、救急や治療を重んじ、リハビリテーションを軽んじるという問題に直面してきた。このためリハビリテーション医療の貫徹と実施は、非常に現実的な意義、重大な社会的意義を持っており、広大な市場の見通しを備えている。リハビリテーションロボット市場に目を向けると、米国や欧州などの先進地域の市場シェアと成長率は、発展途上国を明らかに上回っている。Technavioの報告によると、2015年の世界のリハビリテーションロボット販売額は5.77億ドルで、2020年には市場規模は17.3億ドルに達し、複合年成長率は24.51%に達する見通しだ。

図

図3 世界のリハビリテーションロボット市場規模予測

 2025年までに、中国のリハビリテーション医療産業の規模は1200億元に達する見込みだ。将来は、国家の政策と規範的な誘導によって急速に普及し、リハビリテーション医療産業は新たな変革の時代を迎えることになる。

三、発展のチャンス

 ハイテク大型医療機器であるリハビリテーションロボットは産業として、高投資・高リスク・高付加価値という特性を持っており、また一部では公共製品という属性も備えており、政府が大いに誘導・支援し、市場の不全をある程度正し、補う必要がある。とりわけ第13次5カ年計画(2016~20年)期間には、医療改革が全面的な深化の段階に入り、リハビリテーションロボット産業に深い影響を与えることとなる。

(1)産業計画・政策。「ロボット産業発展計画(2016-2020年)」は、2020年までの目標として、産業規模では、高齢者・障害者支援や医療リハビリテーションなどの分野で小規模の生産と応用を実現すること、技術水準では、医療健康やホームサービス、テロ・暴力事件対策、災害救助、科学研究などの分野のサービスロボットの技術水準を国際水準に近付けることを掲げている。産業ロボットと同様、リハビリテーションロボットに対する社会の関心度はますます高まりつつあり、地方政府は今後、より多くの関連支援措置を相次いで打ち出すと考えられ、政策による効果を期待することができる。

(2)リハビリテーション治療の医療保険改革。医療リハビリテーション項目にかかわる医療保険改革のおおまかな方向としては次のものが挙げられる。(1)払い戻しを申請できるリハビリテーションの種類を増やす、(2)リハビリテーション専門医院で治療を受ける患者の実際の払い戻しの割合を高める、(3)規範に合致した民営医院を医療保険支払い体系に組み入れ続ける――。「新規医療リハビリテーション項目の基本医療保障支払い範囲への組み入れに関する通知」は、2016年6月30日から、すでに支払い範囲に組み入れられている9件の医療リハビリテーション項目のほかに、新たに20件のリハビリテーション項目を新たに医療保険に組み入れることを求めている。

 経済性の角度から見ると、例えば脳梗塞患者を例に取れば、中国の脳梗塞患者の毎年の入院回数は3回から4回である。もしも最初の脳梗塞の発作後、すぐにリハビリテーション治療を受ければ、84%の患者が通常の生活に戻れる。だがすばやい治療を受けない場合、肢体の障害で往々にして再入院ということになり、医療保険基金からのより多くの支出が必要となる。社会的な効果という角度から見ると、障害者リハビリテーションの投入産出比率は1:4と1:10の間である。

(3)医療設備の国産化。政府は、公立病院が国産設備を調達することを奨励している。将来的には、医療機器の国産化を促進するさらに多くの政策が打ち出され、国内のリハビリテーションロボットメーカーはその利益を受けることとなる。2014年5月、国家衛生・計画生育委員会の委托を受け、中国医学装備学会は、臨床の需要に合致し、製品の品質が優良で、市場競争力と発展潜在力を備えた複数の国産医療設備を選出し、優秀製品リストを作成した。同年8月、国家衛生・計画生育委員会と工業・情報化部は共同で、三甲病院(大規模病院)での国産医療設備の応用の推進を打ち出した。

(4)リハビリテーション治療市場の硬直的需要。中国では、リハビリテーションロボットは医療機器に属し、(1)市場に硬直的需要がある、(2)経済リスクに対する産業の抵抗力が強い、(3)先行者による障壁が高い――という医療機器産業に共通する属性を備えている。第一に、ユーザーの定着度が高く、設備がある病院に一度導入されれば、その後のアフターサービスやメンテナンス、アップグレードなどはどれも、メーカーにとっては利潤を生み続ける業務となる。さらに企業はこのルートを利用してほかの製品の販売も促進でき、その他の企業はなかなか割って入ることができない。第二に、ある特定の地域においては、「窓口病院」が貴重な資源となり、「早い者勝ち」となっている。その波及作用は巨大で、後続の顧客の視察も使用者の訓練も、この窓口病院を通じてなされることとなる。

四、直面する試練

 先進国は、巨額の研究開発・推進資金を投入し、多くのリハビリテーションロボットメーカーを育て、リハビリテーションロボットの技術体験と治療師と民衆の間での認知度を高め、リハビリテーションロボットの応用普及を促進した。先進国の製品との間の格差を縮小するために、中国のリハビリテーションロボットは、次のいくつかの問題を重点的に解決する必要がある。

(1)ハイエンド製品の不足。リハビリテーションロボットは、団体ユーザーへの普及から個人ユーザーへの普及という過程を経なければならないが、中国はまだ、団体ユーザーへの普及という段階にとどまり、現時点では牽引式/懸架式リハビリテーションロボットだけが臨床応用されている。中国メーカーはミドルローエンド市場では一定のシェアを持つが、ミドルハイエンド市場は欧米ブランドに独占されている。例えばHocoma社のLokomatやWOODWAY社のLokohelpの保有量は100台前後で、ローエンド市場にも浸透を始めており、中国ブランドの市場空間を圧縮するものと考えられる。

(2)研究が重視される一方、産業化が軽視されている。中国国内の研究機関は、プロジェクトの立案を過度に重視し、成果の転化を軽視している。そのため応用研究の現状と市場のニーズとのギャップが拡大している。初期的な調査によると、政府の援助を受けた応用型研究課題のうち、期限どおりに成果の評定を通過したものは約20%で、産業化を実現したものは10%に満たず、多くはワーキングサンプル(小規模実験)開発段階にとどまり、製品サンプル(パイロット実験)段階にあるものは少ない。こうした「頭が重く足が軽い」と形容される成果の区分と評価のメカニズムは、「研究のために研究し、成果のために成果を求める」という傾向を助長し、産業化技術開発の難度を高めている。

(3)リハビリテーション評価メカニズムの整備。安全性は、リハビリテーションロボット設計プロセスにおいて重点的な解决が必要な問題の一つである。臨床リハビリテーション訓練の基本動作と安全性の要求に基づき、ロボットの機能の実現を考慮するほかに、患肢の二次損傷を防止する必要があり、機構設計(ハードウェア)と制御システム(ソフトウェア)の両面からリハビリテーションロボットシステムの安全性を確保する必要がある。このほか筋電信号検出と結合し、訓練パラメーターとリハビリテーション効果の間の関係を研究し、訓練の効果を高める必要がある。さらに臨床リハビリテーションの法則を探求し、運動機能のリハビリテーションに対する理解を深め、リハビリテーションの評価メカニズムを整備しなければならない。

(4)民間リハビリテーション市場の開拓。公立医療機関のルートでは障壁が高く、建設費用も高い。民営の医療機関は、設備の機能性や信頼性をより重視し、価格にそれほど敏感でないという特性を持っており、調達の周期が短く、規模も大きく、コストパフォーマンスをより重視する。このため中国産リハビリテーションロボットは、コストパフォーマンスの高さと柔軟な協力方式によって、民営リハビリテーション機関市場にまず切り込んでいくことが考えられる。民間資本の医療経営に対する国家政策の支援が強化され続ける中、リハビリテーション病院は、人材に対する要求が低い、収益サイクルが短い、再現や拡張が容易であるといった長所によって、民間資本の注目を集めている。現在、リハビリテーション病院のうち民営の比率はすでに58.1%に達している。民営病院は将来、リハビリテーションロボット調達の主力となる見通しだ。

(5)遠隔リハビリテーション医療。リハビリテーション医療訓練の必要な脳梗塞や上肢損傷などの患者は増加しているが、医療資源やコストなどの各種の要素の制約を受け、病院で長期にわたってリハビリテーション治療を受けることはできないのが現状である。このため、退院後に家庭または居住地の医療センターでリハビリテーション訓練を継続することが有効な方法となる。コンピューターネットワークを利用して遠隔リハビリテーション訓練プラットフォームを構築することで、患者と治療師に経済的で便利な方法を提供することができる。

五、結語

 中国のリハビリテーションロボット市場の需要は大きい。現在は、ハイエンド製品は輸入への依存が深刻で、ローエンド製品は信頼性・安定性の強化が待たれている。今後は、研究開発の投資を拡大し、大量のリハビリテーションロボットを導入し、リハビリテーション医療資源のカバー能力を高め、リハビリテーション医療の専門人材に対する依存を低下させ、繁雑で繰り返される訓練任務から医師を解放し、医師が治療プランの改良により集中できるようにし、集中リハビリテーション医療と遠隔リハビリテーション医療を発展させる必要がある。

主要参考文献:

[1]. 胡進,侯増広,陳翼匈,張峰,王衛群.下肢康復機器人及其交互控制方法[J].自動化学報,2014,40(11):2377-2390.

[2]. 丁敏,李建民,呉慶文,沈海涛.下肢歩態康復機器人:研究進展及臨床応用[J].中国組織工程研究與臨床康復,2010,14(35):6604-6607.

[3]. 鄧志東,程振波.我国助老助残機器人産業與技術発展現状調研[J].機器人技術與応用,2009,2:20-24.

[4]. 楊啓志,曹電鋒,趙金海.上肢康復機器人研究現状的分析[J].機器人,2013,35(5):630-640.

[5]. 胡宇川,季林紅.从医学角度探討偏癱上肢康復訓練機器人的設計[J].中国臨床康復,2004,8(34):7754-7756.

[6]. 李慶玲,孫立寧,杜志江.上肢康復機器人発展現状的分析與研究[J].機械設計,2008,25(9):67-70.


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