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バナメイエビ(Litopenaeus vannamei)の工場化養殖システムにおける微細藻類群集の特徴の分析(その1)

2017年12月26日

沈 明明: 上海海洋大学水産・生命学院、農業部海洋漁業可持続発展重点実験室 中国水産科学研究院黄海水産研究所

李 健、王 清印、劉 萍、常 志強: 上海海洋大学水産・生命学院、青島海洋科学・技術国家実験室 海洋漁業科学・食物産出過程功能実験室

葛 紅星: 農業部海洋漁業可持続発展重点実験室 中国水産科学研究院黄海水産研究所

概要

 2015年6月から9月まで、青島市宝栄水産科技有限公司のバナメイエビ(Litopenaeus vannamei)工場化養殖プラントの6つの実験池に対するサンプリング調査を行い、水 中の微細藻類の種類構成や現存量、多様性、優占種の遷移の特徴を分析し、養殖状況と結びつけて検討した。検出された微細藻類は5門28属49種(そのうち優占種は14種)で、現存量の範囲は5.2×10 5–9 .4×10 8cell/L、生物量の範囲は1.23–208.00mg/L、多様度指数の範囲は0.42–2.44だった。多様度指数が0.9より低い時には、生態系の安定性は低く、エ ビは病気にかかりやすい。養 殖段階の違いに応じて、微細藻類の優占種の種類は異なる。前期は主に緑藻植物門(Chlorophyta)と珪藻植物門(Bacillarionphyta)、一部の炎色植物門( Pyrrophyta)の 種類であり、中後期は藍藻植物門(Cyanophyta)のミクロキスティス(Microcystis sp.)とユレモ(Oscillatoria sp.)が中心となる。エ ビの養殖密度は、微 細藻類の優占種の遷移に際立った影響を与える。300ind/m 2の養殖密度(A1池)では藻類相が安定し、緑藻と珪藻が優占種となり、エビの生長は良好となる。400–500ind/m 2の養殖密度(B1、C 1、C2池)では、ユレモが、中後期の遷移において絶対優占種となり、エビが発病・死亡しやすくなる。本研究は、エビの工場化養殖環境の最適化と養殖生産の指導の参考に供するものである。

キーワード:バナメイエビ; 工場化養殖; 微細藻類; 群集特徴

 エビの池中養殖はこれまでずっと、中国の主要な伝統的生産モデルとなって来た。だがこのモデルには、養殖水域の汚染が深刻である、感染症が出現しやすい、気候の制約を受ける、単 位面積当たりの産出量が比較的低いなどの問題があった。これに対して、エビの工場化養殖モデルは、環境汚染が比較的軽く、エビの爆発的な感染症を有効に防止でき、生産量が高く、エビの食品安全を有効に保証できる( 孟慶武ら,2008)。ここ数年、バナメイエビ(Litopenaeus vannamei)の工場化養殖モデルは、山東省の青島や日照などの地区で急速に発展している。工場化養殖モデルでは、外 界の感染病源との経路が遮断され、養殖用水に対してはより規範的で科学的な管理がなされるが、病害は依然としてしばしば発生する。これは、水中に浮游する藻類の群集の遷移と一定の関係があると考えられる( 陳剣鋒ら,2006)。微細藻類は、エビ養殖池の生態系の重要な構成要素である。とりわけ数量と生物量が支配的な地位を占める優占種は、微細藻類の群集の特徴を一定程度代表し、その変動は、エ ビの生長に一定の影響をもたらす。エビ養殖池の微細藻類の群集の特徴を詳しく研究することは、エビ養殖池の人工生態系の構造や機能の解明に重要な理論的意義を持つだけでなく、浮 游植物の個体群と数量の適度な制御やエビの安定的な産出の維持に重要な実践的意義を持っている(Attaydeら,1999)。中国におけるエビの工場化養殖の発展の歴史はまだ浅く、現 在の研究報告の多くは養殖の効果と利益、理化学的因子、管理技術などの面に集中している(李玉全,2006 1; 謝立民ら,2003; 劉嬌ら,2008; 劉海英,2006 2; 管崇武ら,2010)。バ ナメイエビの工場化養殖システムにおける微細藻類群集の特徴に関してはまだ体系的な研究報告がなく、微細藻類群集の遷移法則とその養殖環境因子との関係も明確でない。本稿は、バ ナメイエビの工場化養殖システムにおける微細藻類群集の特徴を研究し、種類構成や現存量、多様性、優占種の遷移の特徴を体系的に分析し、養殖状況と結びつけて検討し、エ ビの工場化養殖環境の最適化と養殖生産の指導への参考の提供をはかったものである。

1 材料と方法

1.1 サンプル採取地点

 本実験は、2015年6月から9月まで青島市宝栄水産科技有限公司で行った。エビ工場化養殖プラントの上部は保温のためのプラスチックフィルムによってカバーされ、内 部には60個の面積2.67m2の六角形に近いセメント池が設けられている。池の底には空気供給のための「回」字型ナノ気孔チューブが敷設され、独立した給排水系統が備えられている。養殖用水は、サ ンドフィルターと消毒、十分な曝気を経た地下海水である。本実験では、基本的に同じ条件を備えたセメント池を6つ選び、実験用バナメイエビは広東恒興育苗場から購入した。稚エビは20日間の短期飼育を経て、体 重が(0.036±0.006)gに達した6月10日、養殖池に放たれた。養殖池のコードはA1、A2、B1、B2、C1、C2で、エビ養殖密度はA1池とA2池が300ind/m2、B 1池とB2池が400ind/m2、C1とC2が500ind/m2とした。

 彭聡聡ら(2011)のエビ養殖段階の区分方法を参考とし、エビの生長状況に基づき、サンプル採取の周期を考慮し、エビの養殖周期を3つの段階に分けた。6月13日から7月11日までを前期、7 月12日から8月8日までを中期、8月9日から9月6日までを後期とした。

1.2 サンプルの採取と処理

 2015年6月13日から9月6日までの合計84日間、14日ごとに各池から水サンプル2Lを採取し、1Lをポリエチレンのプラスチックボトルに入れ、5%のルゴール液(Lugol's solution)を加えて固定し、24時間静置した後、水サンプルを20mlに濃縮し、顕微鏡下で微細藻類を検査した。残りの1Lの水サンプルはボトルに入れて実験室に持ち帰り、低温で保存し、ア ンモニア性窒素などの化学的な因子の測定に用いた。

 『中国海藻志』(郭玉潔ら,2003)や『水生生物学』(趙文ら,2005)などに照らして、微細藻類の定性的評価を行った。血球計算盤を用いて定量測定し、0.1mlの濃縮水サンプルを取り、計 数フレーム内の数を顕微鏡の下で数える。浮游植物細胞がランダムに分布しているとすれば、計数誤差は±10%内となる。

 毎日、YSI556型マルチパラメーター水質計(YSI、米国)を使用し、実験池の水体の温度(T)と溶存酸素(DO)、塩度(S)、pH値などの一般の水質パラメーターをモニタリングした。水 サンプル中のアンモニア性窒素(NH4+-N)や亜硝酸塩(NO2-N)、硝酸塩(NO3-N)、リン酸塩(PO43–-P)、全窒素(TN)、全リン(TP)などの濃度はいずれも「海洋調査規範」( GB/T12763.4-2007)に照らして測定した。

1.3 データ処理

微細藻類密度D(cell/L)=200×Pn×N0/N1

 式中のPnは計数フレームで計数された浮游植物の個数、N0は計数フレームの総数、N1は計数されたフレーム数である。

 生物量(mg/L)の計算は蔡林婷ら(2013)の方法を参照した。

B=D×R

 式中のBは微細藻類の生物量、R小型藻=2×10–7mg、R中型藻=2×10–6mg、R大型藻=5×10–6mgである。

 浮游植物の多様度指数はShannon-Wiener品種多様度指数(H’)を採用した。

 式中ではいずれも品種の数量を指標として作用した。このうちPi=ni/Nで、niは品種iの個体数、Nは群集サンプルの総個体数である。Piは品種iが総個体数に占める割合であり、S は群集の品種数である。

 張才学ら(2007)の微細藻類の現存量区分の方法に照らして、微細藻類Pi<0.01は希少種、0.01≤Pi≤0.1は普通種、Pi≥0.1は優占種とする。

その2につづく)

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※本稿は沈明明, 李健, 王清印, 葛紅星, 劉萍, 常志強「凡納濱対蝦(Litopenaeus vannamei)工廠化養殖系統微藻的群落特征分析」(『漁業科学進展』2 017年第38卷第5期、pp.64-72)を『漁業科学進展』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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