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テクノロジー型民営企業の借り入れ難をどう解決するか

2018年12月5日 雍黎(科技日報記者)

 融資を受けるのが難しく、受けてもコストが高いというのが民営の中小企業の発展を阻む重要な要素となっている。特に、イノベーションを特徴にし、人材を支えとし、知的財産権を中心としながら、固定資産が不足し、短期財務指標が思わしくないテクノロジー型企業には、乗り越えるのが困難なボトルネックとなっている。テクノロジー型民営企業の融資をめぐる問題の解決策はないのだろうか?重慶市は2017年7月中旬から、テクノロジー型企業を対象に知的価値信用貸付の試験的取り組みを始め、今年10月末の時点で、企業411社が貸付を受け、その総額は11億4,300万元に達している。うち、126社は、初めて銀行の貸付を受けた。

テクノロジー型民営企業が現行のルートで融資を受けるのは困難

 企業の発展には融資が必要であるものの、金融機関は土地や工場などの固定資産を担保にするよう求める。そして、ほとんどのアセットライト経営のテクノロジー型企業にとっては、それが融資を受けるために解決しがたい難題である。

 重慶臻憬科技有限公司は、飲食のスマート化に取り組むテクノロジー型企業で、主にIoTを飲食業界に応用し、IoTスマート飲食プラットホームの構築を目指している。譚明・経理(マネージャー)は、「産、学、研が一体となったテクノロジー企業である当社が持っているのは全て無形資産。企業の発展には、研究開発や設備のアップデートのための融資が必要だ。しかし、土地はなく、生産・製造工場も借りているもの。手元にあるものと言えば、各種特許やソフトウェアの著作権だけだ。伝統的な商業価値信用評価体系では、それら無形資産をお金に変えることはできない」と話す。

 そのような悩みを抱えているのは、この会社だけではない。

 中国で初めて日差しの弱い地域における効率の良い太陽光発電システムの研究開発、設計、販売、運営を行う企業である重慶輝騰能源股份有限公司は、関連の分野の研究開発に取り組んでおり、これまでに100件以上の特許を取得した。輝騰能源の瀋正華・総経理は、「アセットライト経営の企業である当社は、銀行から貸付を受けるのはとても難しい。以前に銀行から200万元借りた際には、株主の不動産を担保にして借りることができた」と説明する。

イノベーションモデルを知的価値信用評価で資金に換える

 昨年、重慶市科技局が、先頭を切って試験的取り組みを開始して以来、輝騰能源は重慶市で初めての知的価値信用貸付を受けた企業となった。同社は、特許、研究開発成果などの指標に基づいて、すぐに120万元の知的価値信用限度額を得て、今年8月に昨年の貸付金を返済した。また、2回目の知的価値信用貸付を申請し、280万元の貸付を受けた。

 瀋総経理は、「ピンチを乗り切ることができた。400万元の貸付金があったおかげで、今年9月6日、当社は正式に新三板(全国中小企業株式譲渡システム)に株式を公開し、太陽光発電関連企業としては、重慶市で初めて上場した企業になった」と話す。

 「テクノロジー型中小企業は、社会のイノベーション発展の新手の勢力で、それら企業のほぼ全てが民営企業だ。」重慶市科技局の担当者によると、テクノロジー型企業は、資産よりもイノベーションを重視するという特徴があり、固定資産を基礎とし、財務指標がカギとなる伝統的な商業的価値信用評価体系では、それら企業が貸付を受けるのは困難だという。

 テクノロジー型企業への融資を阻む壁をどのように取り除けば良いのだろう。重慶市は、テクノロジー型企業はアセットライト経営という特徴に的を絞り、知的価値信用評価体系を構築し、試験ポイントを設置して知的価値信用貸付を実施し、アセットライト経営のテクノロジー型企業に対する融資の先駆けとなった。

 知的価値信用評価体系は、知的財産権、研究開発への資金投入、テクノロジー人材、イノベーション製品、イノベーション企業などの指標に基づいて、テクノロジー型企業に対する信用評価を実施し、信用ランクや参考信用限度額を算出している。そして、銀行は参考信用限度額に基づいて、テクノロジー型企業に貸し付けを行う。

融資を受けるのが困難な企業が実益を受けて発展

 重慶市科技局の担当者は、「知的価値信用評価体系を活用して、テクノロジー型企業と金融機構の間にある信用をめぐる壁を取り除き、技術と資本の効果的なマッチングを促進する。この方法は確かにテクノロジー型企業の融資を受けるのが困難、コストが高いという問題を緩和している」と話す。そして、融資後の銀行の懸念を少しでも減らすため、テクノロジー型企業の知的価値信用貸付リスク補償基金も立ち上げて、融資を受けた企業が返済期限を過ぎても返済できないリスクが発生した場合、リスク補償基金が損失の80%を補償し、銀行が残りの20%を負担することになっているという。現在、提携している銀行は、テクノロジー型企業に対して、標準金利で、抵当、担保、保証金、その他の費用なし、支店による直接審査・認可などの優待措置もすべて行っている。

 昨年7月中旬、重慶ハイテクパークで試験的取り組みが実施されて以降、重慶市で改革に参加しているのは、20の区・県、ハイテクパーク、経済開発区に拡大している。今年10月末の時点で、試験区に登録のテクノロジー型企業は2,524社に達しており、833社が貸付の申請を行った。そして、銀行の審査をクリアしたのは432社で、411社に既に貸付が行われ、貸付額は合わせて11億4,300万元に達した。うち、126社は初めて銀行の貸付を受けたもので、この取り組みは、成長初期のテクノロジー型企業への大きなバックアップとなっている。その他、標準金利で行われるため、伝統的な商業信用貸付と比べると、融資コストが約半分まで下げることができ、テクノロジー型企業の融資はコストが高いという問題が一部緩和されている

 この一連の改革で実益を受けているのはやはりテクノロジー型企業だ。統計によると、融資を受けた企業のうち、43社がすでに上海証券取引所の取引市場「科創板(科学技術イノベーションボード)」に上場した。


※本稿は、科技日報「如何解決科技型民営企業融資」(2018年11月27日付1面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。


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